3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 懐石料理を予約してくれていて、テーブルいっぱいに料理が並べられた。盛り付けも綺麗で美味しそう。

「いただきます」

「いただきます」

 すっかりふたりで手を合わせてから食べるのが習慣になっていて、自然と互いに笑みが零れる。

「この店さ、じいちゃん行きつけで俺もよく連れてきてもらっていたんだ。どの料理も味付けが繊細で美味いから食べてみて」

「はい、ありがとうございます」

 理人さんの言う通り料理ひとつひとつの味付けが異なっていて、参考にもなる。

「ごちそうさまでした。どの料理も本当に美味しかったです」

「それならよかった。また今度来よう」

「……はい」

 三年あれば、あと数回は理人さんと来ることができるよね。でも店の雰囲気もいいし、料理が絶品でひとりでも来たくなるほどだった。離婚後もこっそり来ちゃおうかな。

 そんなことを考えながら食後の玄米茶とデザートのあんみつに舌鼓を打つ。

「本当にいつもご飯を作ってくれてありがとう」

 急にお礼を言い出した理人さんを見ると、目を細めて優しい顔で私を見つめていたから白玉が詰まりそうになり、慌ててお茶で流した。
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