3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「それはふたりで生活するうえで必要な物だろ? 野々花が使うものを買っていいよ」

「そうはいきません。自分の物は自分で働いたお金で買います」

 自分で稼いだお金で買うから洋服やバッグに愛着が湧く。好きな物をって言われても返って困ってしまうよ。

「それじゃ俺の気がすまない。じゃあ俺になにかしてほしいことは? 野々花の頼みならなんでも聞くよ」

 これはなにか提案しないことには折れてくれなそうだ。とはいえ、欲しい物なんてないし、理人さんにお願いしたいこともとくに浮かばない。

 どうしよう、なにかないかな。
 必死に頭を捻る間も、理人さんは期待を含んだ目をして私の答えを待っている。

「えっと……」

 なにをお願いする? 家事はすべて家政婦さんがやってくれているし、料理で手伝ってもらうことはないし……。
 考えること数十秒、祖母の顔が頭をよぎった。

「あ、理人さん。難しいかもしれませんが今度、休みが合う日があったら一緒におばあちゃんの家に行ってくれませんか?」

「もちろんいいけど……それが頼み?」

 想定外だったようで理人さんは目を瞬かせた。
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