夢物語
3
私と君の話
次の日から、私は一人、街の中を探索する日々が始まった。街を自由に歩き回って答えへ繋がる欠片を探し、そして夕方になる頃にまたあの海で彼に新たに生まれた疑問に答えてもらう。そんな一日の繰り返しが今日で三日目となっていた。
今日までに分かった事といえば二つ。彼の為の物はこの街に存在しないという事と、この街から私一人では出られないという事。
初日にお城以外の彼の家の様な物を探してみたけれど残念ながら見つからず、お城だけでなく、彼は自分の為の物の何もかもをこの街から消してしまったのだと教えてもらった。
ならば街の外にあるのではと思い立ち、次の日は街を出ようと試みたものの門はびくともせず、どこを探しても外へ繋がる入り口は見つからなかった。その日の海では彼に寂しい顔をさせてしまい、自分の軽率な行動に反省する事となった。
そして迎えた今日、三日目。今日は街の中に彼の物が無いのだとしたら他の誰かの物ならあるのかもと、もう一度街を歩き回ってみる事に。
結果、今誰かが住んでいる家や働いている人が居るお店、という物は無かったけれど、どちらもすぐに使い出す事が出来る状態で存在している事に新たに思う事が見つかった。もしかしたら、家も店も本当は必要とされた事があるもので、だからそのままの状態でここにあるのではないのかなと。
だってこの街に彼の為の物は無いはずだから、自分の為に用意したのならもうここから無くなっているはずだ。誰かの為のものだから綺麗な状態で存在しているのかもと思うと、とても自然な事の様に感じたのだ。
「この街には昔、誰かが居た事があるの?」
相変わらずの曇り空の下。彼と並んだ堤防の前で、海を眺める彼に問う。すると彼は驚いた表情で私を見た後、寂しそうな微笑みを浮かべて横に首を振った。