夢物語

他人と夢を共有する事が本当に起こり得るのか、どうやったら自らの意思で夢を繋ぐ事が出来るのか、どこかに書いていないかなと思ったのだ。だって次の夢で彼を探す事になったけれど、もしそこで見つけられなかったら? これで諦めると言った彼はその瞬間からもう夢に現れてくれなくなるのではと、そんな嫌な答えに辿り着いてしまった。

私には分からない所で彼は思い悩んでいる。それだけは話した中で分かっていたので、そんな風に拒絶されてしまうのはとてもあり得る事に思えた。だったらどうしようと焦る私が考えついた一つの答えが、私から夢を繋ぐという方法だ。

もし彼から繋がりを絶たれて会えなくなってしまったら。その時は逆に私の方から彼の夢に繋げられないのかなと思いつくまでそう時間は掛からなくて、焦って不安になったとしても自分は意外と前向きに進んでいくタイプなのだと初めて知った。こんな風に思い悩んだ事自体が初めてだったのかもしれない。

手遅れになる前に対策を練っておきたい。その手段を確保しつつ、次の夢では彼を全力で見つけ出したい。その結果が、夢についての参考書を読む、という今の状況だった。


「中川君はよく夢を見る?」

「夢は見るけど……大体朝にはどんな夢だったのか忘れてる事が多いかな。楽しかったとか大変だったとか覚えてても、内容までははっきり思い出せなくてがっかりする時がある」

「なるほど。確かに、普通そうかもしれない」


私の夢も起きた瞬間は覚えていても、時間が経つにつれてどんどん忘れて、昼には綺麗さっぱりな時もある。それは大体彼と繋がっていない時の夢だから、こっちは普通の夢で間違い無いのだろう。普通はそんなものである。
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