夢物語
頑なに否定する彼にはもう、どんな言葉も心に届きそうに無かった。本当に実在する人物だという事は受け入れてくれている。同じ世界に生きている人間なのだと認めて貰えた今、どうしても彼に会いたいと思うし、彼の事をもっと知りたい。
どうしたら分かって貰えるのだろう……人付き合いの経験が少ない私には、上手く答えを導きだせない。
「……君がどんな人だろうと構わないのに。本当はすっごくお爺ちゃんだとしてもいいの。私、会いにいくよ」
「なんでもいいならここでいいはず。それで十分だよ」
「なんでそんなに会わせてくれないの?」
「嫌われたくないから」
「嫌わないよ!」
「そんなの信じられない」
「じゃあどうしたら信じてくれるの?」
堂々巡りのやり取りに、思わず小さな彼の手を握る。もう嫌だと、そのままどこかへ行ってしまわないか心配だった。分かった会おうと言ってくれるまでは粘るつもりだ。だって夢では会ってくれるつもりがあるのなら、私の事が嫌な訳では無いはずでしょう? 嫌われるのが心配だというのなら、それは無用な心配なのである。そんな事は絶対にしない。
テコでも動かないと心に決めた私の決意は、彼に伝わったのだろう。眉根を寄せた彼は大きな溜息をついた。