君の秘密を聞かせて
 修ちゃん、ごめんね。

 今まで、ここへ来れなくて。

 大切な修ちゃんを、助けられなくて。

 いつも私のことを助けてくれて、ありがとう。

 私の将来のことまで考えていてくれて、ありがとう。

 苦しいけれど、今でも逃げ出したくなるけれど。

 私は生きてみるよ。

 修ちゃんがいない世界を。逃げずに生きるよ。

 そして、いつだって修ちゃんの幸せを、祈ってるから。

 ……。

 ごめんね。

 修ちゃんのこと、助けたかった。

 あの日、うちには来なくていいからねって言いたかった。

 言わなかった、自分が憎くて。

 苦しくて、どうしても許せない……。

 それでも、生きていく私を……許してなんて、言えない。

 ただただ、修ちゃんのことを、想ってる。

 修ちゃん、大好きだよ。



「……よかった。やっと、ここに来れて」

 蓮くんが小さく呟いた。

 蓮くんも、目の縁がうっすらと光っている。その言葉のニュアンスに、つい聞き返した。

「……蓮くんも、来れなかったの?」

「うん……本当は、お葬式にも出ようとしたんだけど。どうしても、行けなかった……。それで、式場の横の公園に座ってたら、遠くのベンチに座って泣いてる女の子を見つけて。あれが僕の中で、芽依ちゃんとのはじめての出会いだったな」

 蓮くんが、お花の前にしゃがみ込んだまま、私の右手を握る。それを私は、握り返した。



 私は、これからも生きていく。

 この後悔の気持ちと一緒に。

 この罪悪感と、一緒に。

 それはもしかしたら、死ぬよりもつらいことかもしれない。

 何か幸せなことがあったら、私はきっとその度に修ちゃんのことを思い出すのだろうから。それを修ちゃんは望まないだろうけど、私はその度に懺悔して、悲しみに暮れてしまう。

 でも、それが自分が選んだ道だから。

 どうすることもできない私がたどり着いた、ひとつの答えだから。私はそうして、生きていくことにするよ。

 ——そして。

 そして、もし、可能なら。

 一緒にいてほしいと思ったんだ。

 蓮くんに。

 どんなに罪深くても。だめな私でも。

 あの日。夕暮れの教室で、自分の恋心を打ち明けた修ちゃんの目は本当にキラキラしていて。今、私はその感情に心当たりがある。

 好きな人と一緒にいると、心がふわふわ空に浮き上がって、温かな気持ちになれる。そんな気持ち。

 私は、なんて愚かな人間なのだろう……。

 罪深くて、汚くて、卑怯な人間。

 でも。それでも。

 修ちゃんが見た世界を、私も見てみたい。



「……あ」

「どうかした? 芽依ちゃん」

「……ううん。気のせい」

 涙が溢れそうになって、慌てて両手で拭った。

 向かいのホームで手を振っていた修ちゃんが、満面の笑みのまま、ふわりと消えていくのが見えた気がした。



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