きみがいる、この世界で。
学校は、部屋から徒歩十五分のところにあった。鈴木さんに言われた通り、始業時間よりも30分ほど前に職員室へ行くと、ジャージを着た男の先生が「よく来たな」と笑顔で迎えてくれた。少しだけ校舎内を案内してもらい、職員室へ戻って教科書を受け取る。それから趣味や前の学校での様子などを少しだけ話し、予鈴が鳴ったのを合図に先生と一緒に職員室を出た。
「緊張してる?」
「……はい。転入するのは初めてなので」
そもそもこの世界に来たのも昨日だし。そんなこと、絶対に言わないけれど。言ったら即座に「ちょっと変わった奴だ」と認定されるだろうから。
「うちのクラスは明るい奴が多いから、すぐに友達ができると思うよ。あまり身構えず、リラックスして」
先生の言葉は本当で、先生が教室のドアを開けた瞬間、「わー! 転校生だー!」「どこから来たの!?」「名前、なんていうのー?」と教室中が騒がしくなる。先生に促され、簡単な自己紹介をすると、クラス中から割れんばかりの拍手が送られた。
なんだか……久しぶりだな。こうやって、クラスメートたちから”普通に”笑顔を向けられるの。
意図せず、目頭が熱くなる。誤魔化すように、ペコリと頭を下げた。