きみがいる、この世界で。

「友梨ちゃんが告白したんだ?」

「うん。高校1年生の時から好きだったんだけど、なかなか脈がなくてね。奈々にいっぱい協力してもらったんだ~」

「奈々ちゃんに?」

「そう。奈々と阿部くん、幼馴染だから仲良くてね。いっぱい頼らせてもらっちゃった」

「……不安じゃなかったの?」

「不安?」

私の言葉の意味がわからなかったようで、友梨ちゃんはポカンとした表情で問い返した。

「奈々ちゃんと阿部くん、仲良いんでしょ? 阿部くんが奈々ちゃんのこと好きじゃないのか、とか、奈々ちゃんに取られちゃうんじゃないか、とか……」

うまく言えない。うまく言えないけれど友梨ちゃんには伝わったようで「そんなこと考えたことなかったなあ」とふわりと笑った。

「奈々から『阿部くんとは仲良いけれど恋愛感情は一切無い』って聞いていたし。阿部くんが奈々のことを好きなら仕方がないけれど……奈々に取られちゃうかも、とか、そんなのは考えたことなかったかなあ」

「そっか……」

それは友梨ちゃんが奈々ちゃんのことを信じていたからだろうか。
それとも、”親友が好きな人に取られる”とは、普通は考えないからだろうか。

「涼音ちゃん? どうしたの、急に難しい顔して」

「あ、ごめん、何もない。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

「ううん、あ、見て、この前の土曜日、初めてデートしてきたの」

友梨ちゃんはスマートフォンの画面に指を走らせ、一枚の画像を表示させる。そこには、向日葵畑をバックにして、二人が肩を寄せ合いながら写っていた。わずかな距離が初々しさを感じさせる。

「いいねえ、なんだか幸せをお裾分けしてもらった気分」

「ありがと。そう言ってもらえると嬉しいな」

友梨ちゃんは愛おしそうに写真を見つめる。

「まだ向日葵は満開じゃなかったんだけどね、とっても綺麗だったよ」

「向日葵畑かあ……」

高橋くん、向日葵畑、興味あるかな。

「この向日葵畑って、近くにある?」

「ここから? 電車で30分ぐらいかな。まって、今地図送ってあげる」

間をおかずに、ピロン、と音が鳴る。友梨ちゃんから送られてきたメッセージを開くと、1つのURLが貼られていた。開けると、向日葵畑の写真と一緒に、地図が表示された。

「ちなみにここの近くに、白浜が綺麗な海があるんだよー。遊泳区域じゃないからほとんど人いないし、のんびりできるからオススメだよ」

先程送られたきたメッセージの下にもう一つ、URLが追加される。リンク先を表示させると、教えてくれた海がある場所が地図上に示されている。向日葵畑から歩いて10分ほどのところだった。

「ありがとう、友梨ちゃん!」

「どういたしまして! 行くなら楽しんできてね?」

「うん、本当にありがとう!!」

昨日連絡先を交換しておいてよかった。後で早速、メッセージを送ってみよう。

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