ねこはちさん〜魔法を手にしたネコ〜
第一話
これは、噂で聞いた話。
猫の爪みたいな三日月の夜。
強い思いでお祈りをしていたら。
願いが叶うんだって。
……嘘じゃないかって?
私、寅山 朝子も本当は信じてなかったけれど。
あの日、信じるようになっちゃった。
そう、あの日。
猫野 八助、通称・ねこはちさんに出会った日。
だって。
ねこはちさんは。
お祈りをしたおかげで。
人の言葉を話せるようになったんだもの。
雪が降りそうな朝。
お布団からなかなか出られなくて。
遅刻しちゃいそう!
かけ足で小学校へ急ぐ。
二丁目のあるお家の前。
(えっ!?)
思わず立ち止まって、二度見しちゃった。
だって。
ネコが……!
「二本足で立ってる!?」
思わず出た声を口の中に戻すみたいに、私は両手で口を覆った。
そのネコは。
お家の窓のところをじっと見つめている。