ねこはちさん〜魔法を手にしたネコ〜
お家の人が、窓辺に寄って来た。
「あらー、小町ちゃん。お外に出たいなんて、珍しいのね」
そう言って、窓をほんの少し開ける。
「寒いから、すぐに帰って来るのよ」
家の人はふいっと部屋の奥に引っ込んだ。
小町さんは。
軽い身のこなしで。
私のそばまで来てくれた。
「ニャー」
「こ、小町さんっ!ねこはちさんがっ!!」
私はしゃがみこんで。
小町さんを見た。
くるっとした、美しいグリーンの瞳。
その瞳で。
ねこはちさんのお父さんの最後を見たんだ。
『小町さんにも、もうどうにも出来ないんだ』
『小町さんも、苦しいんだよ』
ねこはちさんの言葉が頭の中で再生される。
私は。
小町さんに伝えてどうしたかったんだろう?
良い方向に向かう気がしていたけれど。
小町さんを、また苦しめてしまうんじゃないかって。
今更ながら、思った。