ねこはちさん〜魔法を手にしたネコ〜
第十話
あの家の前で。
ねこはちさんは立っていた。
小町さんと向かい合って。
「小町さん、見つからなかったよ。きょうだい、誰も……」
と、ねこはちさんがうつむいた。
「どこにもいなかった。……本当はきょうだいみんなで、小町さんに会いたかったのに……」
小町さんは黙って、ねこはちさんを見ている。
ねこはちさんの目から、キラキラ光るものがこぼれ落ちた。
(涙……)
小町さんは、
「ニャー」
と、ひと声鳴いて。
ねこはちさんに頭をすり寄せた。
とても愛おしそうに。
「……っ、淋しかったよ、母さん……!」
そう言って、ねこはちさんは「うわぁんっ」と泣いた。
そんなねこはちさんの涙を拭うように。
小町さんはねこはちさんの顔を、一生懸命に舐めていた。