【本編完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
第10話 侯爵令嬢様のお茶会~Sideエミール~
エミールはこの日、届いた招待状を持って、マルベール侯爵邸で開催されるお茶会に参加していた。
このお茶会の主催者はマルベール侯爵令嬢であるリュシーのため、本来であれば子爵家というかなり下の身分の者は参加できない。
しかし、マルベール侯爵家は爵位関係なくのお茶会を多く開催しており、今日もその一つであった。
「まあ、そのドレス素敵ね」
「ええ、母からいただいた特別なドレスですの」
「それはより輝いて見えますわね!」
「そう言っていただけると嬉しいわ」
リュシーが花に囲まれた美しい庭園でお茶をしながら話す。
「お父様、とっても素敵な紅茶をいただきました、いい香りでしょう?」
リュシーは隣にいるマルベール侯爵に、友人からもらったレモンティーを薦める。
そのレモンティーをマルベール侯爵は受け取ると、ゆっくりと口に運ぶ。
「ああ、確かにこれはいい香りだ。それに素晴らしく美味しいよ」
リュシーは侯爵のご機嫌な様子を見て「今日はお茶会を開催してよかったわ」と呟く。
そして、このお茶会に招かれていたエミールはリュシーとマルベール侯爵を見つけると、二人のもとへと向かう。
「マルベール侯爵!」
「ああ、君も楽しんでいるかな?」
「はい! とても! 早速ではあるのですが、一つご報告がございまして」
「なんだね?」
エミールの言葉に不思議がるマルベール侯爵。
エミールはマルベール侯爵の隣に立つリュシーのほうにちらりと視線を送り、告げる。
「わたくしとリュシー嬢は愛し合っております。ぜひとも婚約を認めてはもらえないでしょうか」
エミールの発言にまわりはざわつき、口々にひそひそと言葉を交わし合っている。
発言を受けたマルベール侯爵は、隣に顔を向けて真偽を問う。
「リュシー、この事は本当なのか?」
エミールはまわりの声など全く介することなく、言ってやった感満載の笑みでリュシーにアピールしている。
彼女からの好意を受けたエミールは真実の愛に目覚め、婚約を認めてもらう最高のシナリオ通りに動いていた。
リュシーはすっと前に一歩出ると、エミールの顔を見てゆっくりと口を開いた。
「どなたですか? この方は?」
エミールは何かの聞き間違いかと自分の耳を疑った。
そんなはずはない。
だって、目の前にいるのは確かにエミールに好意を寄せているリュシーのはずであり、婚約の申し出に泣いて喜ぶと思っていた。
しかし、実際はどうだろうか。
リュシーの冷めた目に、周りからの痛い視線、そしてマルベール侯爵のエミールに対する嫌疑の目がそこにはあった。
「なっ! リュシー、君は僕のことが好きじゃないか。だって、あの日僕の腕に掴まって……」
リュシーは空を見て考えてみる。
少しの間の後に、彼女は「ああ」といった感じで思い出し、エミールに告げる。
「あぁ、先月開催したお茶会で芝生につまづいてしまって腕を掴んでしまった方かしら?」
「つまづいて……腕を掴んだ……?」
リュシーは丁寧なお辞儀をして、エミールに向かって告げる。
「あの時は助けていただき、ありがとうございました。それから勘違いさせるようなことをしてしまい、申し訳ございませんでした。お許しいただけますでしょうか?」
「なっ……勘違い……。だ、だが君はあの時笑顔で僕に接してくれていたじゃないか! 今からでも遅くはない! ぜひ僕と一緒に……」
「話はそのくらいでいいかな? リュシーにはすでに婚約者がいるんだ。変な噂が立つようなことはよしてくれたまえ」
エミールが言葉を言い終える前に、マルベール侯爵が割って入る。
リュシーは突然現れ強引に言い寄る男に少しおびえていた。
「……婚約者がいる……」
まだ現実を受け止めきれないエミールは唖然とし、そのままへたり込んでしまった。
好意が自らの勘違いだったことに打ちのめされて、放心状態のままお茶会は終了した──
このお茶会の主催者はマルベール侯爵令嬢であるリュシーのため、本来であれば子爵家というかなり下の身分の者は参加できない。
しかし、マルベール侯爵家は爵位関係なくのお茶会を多く開催しており、今日もその一つであった。
「まあ、そのドレス素敵ね」
「ええ、母からいただいた特別なドレスですの」
「それはより輝いて見えますわね!」
「そう言っていただけると嬉しいわ」
リュシーが花に囲まれた美しい庭園でお茶をしながら話す。
「お父様、とっても素敵な紅茶をいただきました、いい香りでしょう?」
リュシーは隣にいるマルベール侯爵に、友人からもらったレモンティーを薦める。
そのレモンティーをマルベール侯爵は受け取ると、ゆっくりと口に運ぶ。
「ああ、確かにこれはいい香りだ。それに素晴らしく美味しいよ」
リュシーは侯爵のご機嫌な様子を見て「今日はお茶会を開催してよかったわ」と呟く。
そして、このお茶会に招かれていたエミールはリュシーとマルベール侯爵を見つけると、二人のもとへと向かう。
「マルベール侯爵!」
「ああ、君も楽しんでいるかな?」
「はい! とても! 早速ではあるのですが、一つご報告がございまして」
「なんだね?」
エミールの言葉に不思議がるマルベール侯爵。
エミールはマルベール侯爵の隣に立つリュシーのほうにちらりと視線を送り、告げる。
「わたくしとリュシー嬢は愛し合っております。ぜひとも婚約を認めてはもらえないでしょうか」
エミールの発言にまわりはざわつき、口々にひそひそと言葉を交わし合っている。
発言を受けたマルベール侯爵は、隣に顔を向けて真偽を問う。
「リュシー、この事は本当なのか?」
エミールはまわりの声など全く介することなく、言ってやった感満載の笑みでリュシーにアピールしている。
彼女からの好意を受けたエミールは真実の愛に目覚め、婚約を認めてもらう最高のシナリオ通りに動いていた。
リュシーはすっと前に一歩出ると、エミールの顔を見てゆっくりと口を開いた。
「どなたですか? この方は?」
エミールは何かの聞き間違いかと自分の耳を疑った。
そんなはずはない。
だって、目の前にいるのは確かにエミールに好意を寄せているリュシーのはずであり、婚約の申し出に泣いて喜ぶと思っていた。
しかし、実際はどうだろうか。
リュシーの冷めた目に、周りからの痛い視線、そしてマルベール侯爵のエミールに対する嫌疑の目がそこにはあった。
「なっ! リュシー、君は僕のことが好きじゃないか。だって、あの日僕の腕に掴まって……」
リュシーは空を見て考えてみる。
少しの間の後に、彼女は「ああ」といった感じで思い出し、エミールに告げる。
「あぁ、先月開催したお茶会で芝生につまづいてしまって腕を掴んでしまった方かしら?」
「つまづいて……腕を掴んだ……?」
リュシーは丁寧なお辞儀をして、エミールに向かって告げる。
「あの時は助けていただき、ありがとうございました。それから勘違いさせるようなことをしてしまい、申し訳ございませんでした。お許しいただけますでしょうか?」
「なっ……勘違い……。だ、だが君はあの時笑顔で僕に接してくれていたじゃないか! 今からでも遅くはない! ぜひ僕と一緒に……」
「話はそのくらいでいいかな? リュシーにはすでに婚約者がいるんだ。変な噂が立つようなことはよしてくれたまえ」
エミールが言葉を言い終える前に、マルベール侯爵が割って入る。
リュシーは突然現れ強引に言い寄る男に少しおびえていた。
「……婚約者がいる……」
まだ現実を受け止めきれないエミールは唖然とし、そのままへたり込んでしまった。
好意が自らの勘違いだったことに打ちのめされて、放心状態のままお茶会は終了した──