【本編完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

最終話 幸せな婚約

 ルノアール公爵家でのパーティーの翌日、エストレ子爵からはソフィとルヴェリエ伯爵家に対して正式な謝罪がおこなわれた。
 ルヴェリエ伯爵はエストレ子爵から受けた以前の恩もあり、これまでの親交を続けることを決めた。


 一方、ソフィはというと、正式にジルの婚約者となり、二人は互いの家を訪れながら愛を育んでいた。

「お父様、お母様、それでは行ってまいります」

 ソフィは馬車に乗り、ルノアール公爵邸へと向かった。


 馬車がルノアール公爵邸へと到着すると、ソフィの到着を待ちきれなかったジルが姿を見せる。

「ジルっ!」

「いらっしゃい、ソフィ」

 二人は挨拶もそこそこに、ジルの自室へと向かっていく。
 今日はソフィの好きな本の話をする約束をしていた。

「これは、100年も前の物語でね、主人公の女の子が……」

 本のことになると饒舌になるソフィを見て、愛しい目で見つめるジル。

「それでね……っ! ごめんなさい、私ばかりお話してしまって……」

「ううん。僕は夢中で話すソフィが可愛くて仕方ないんだ。もっと聴かせて?」

「──っ!」

「だけど、ちょっとソフィに聴いてほしいことがあるんだ」

「……? なに?」

 ソフィは本を静かに閉じると、ジルのほうへと向きなおす。

 すると、ジルは座っていた椅子から立ち上がり、ソフィの前で跪いた。


「ジルっ?!」

「ソフィ、君が他の男と婚約した時、幼い頃からソフィが好きだった僕はとても苦しかった。でももう今は君の婚約者は僕だ。誓うよ、君を一生かけて守り、愛します。だから、僕と結婚してください」

 そういって、小さなソフィの薬指に指輪をはめる。
 可愛いピンクダイヤの入ったリングで、太陽の光に照らされて綺麗に輝いている。

 ジルは少し照れているように顔を逸らした。
 しかし、ソフィの手がジルの顔を捕まえると、そのまま唇を重ねた。

「──っ!」

 ジルは目を見開いて驚くが、すぐにソフィからの愛情を受け取る。
 二人は何度も唇を重ね、手と手を絡ませながらそっと唇を離す。


「私も好き。ジルのことが大好き!」

 そういってジルの胸に飛び込むソフィ。
 たくましい腕でそれを受け止めると、力強くソフィを抱きしめる。


「もう絶対離さないから」

「ええ、離さないで」


 二人の影は再びゆっくりと重なった──
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