【本編完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
【おまけ①】やっぱり好きなので
これはどういうことでしょうか?
私はソフィ・ルヴェリエといいまして、現在婚約者であるジル・ルノアール様の邸宅にお邪魔しております。
ジル専属執事のクロードさんに「ジル様は少々執務で遅れるとのことでして、よかったらラウンジで紅茶でもいかがでしょうか?」ということで、私はお言葉に甘えてラウンジに来ておりました。
そういえば少し前もこんなことがあったような……と自分の心の中で思いながら、ゆっくりと紅茶をいただき待っておりました。
ジルもそうですが、クロードさんも私の好みの紅茶を知ってくださっていて、いつも私の好きなダージリンティーをいれてくださいます。
その紅茶を何口かいただいたあとに、私は見てしまったのです……。
(あら……お庭にジルがいる……お仕事はもう終わったのかしら?)
一人でお庭にいるジルを見つけて、てっきりお仕事が終わったのです。
私はわくわくしながらティーカップをそっと器に置き、ソファから立ち上がってお庭が見える窓に向かおうとしました。
(ん? あれは……)
ところが先程まで柱の陰で見えなかったのか、ジルの横には一人のメイドさんがいらっしゃったのです。
(あの方は確かよくジルのお世話をなさっているメイドさん……)
確かイザベルさんだったでしょうか……。
ジルのお話の中でも、「イザベルはよく気が利くんだ」「イザベルは芯の通った素晴らしい女性だよ」と聞いたことがあります。
あれ……?ジル……私にはそんな評価してくれたことないのに……。
う~ん。とても胸がじんじんとして痛んで苦しいです。
ジルは私に見せるのとは違う、それでも屈託なく笑う様子にショックを受けました。
私は思わず胸を抑えて唇をかんで、こう思いました。
(あんな表情を見せるなんて……これが浮気というものでしょうか……?)
すると、窓越しにジルと目が合ってしまいました。
「──っ!」
私は思わずジルから目を逸らして、ルノアール邸の玄関のほうへと走りました。
窓の向こうから「ソフィっ!!」と呼ぶ声が聞こえましたが、私は立ち止まらずに逃げます。
ようやく玄関の階段に差し掛かったところで、誰かに腕を掴まれました。
「ソフィっ! 待ってっ!!」
振り返るとそこには息せき切って走ってきたジルの姿がありました。
「ジル……」
私は怖くて「あの女性と懇意にしているの?」と聞けずに涙が目にたまってきてしまいました。
「ソフィっ!」
でもどうしても聞きたくて聞いてしまったのです。
あの恐ろしい質問を……。
「ジル……イザベルさんのことが好きなの……?」
怖くて顔も見れない私の視界は、その瞬間にジルの胸でいっぱいになります。
私は抱きしめられたのだと気づくまで数秒かかりました。
「不安にさせてごめん……僕にはソフィだけだよ。信じてほしい……」
そんなの信じられるわけないわ、と言おうとした次の瞬間にはとても真剣な顔でジルが私に話しかけます。
「本当は隠していたかったのだけど……」
ほら、やっぱりやましいことがあるのでしょう?
もうジルは私のことを好きじゃないのかしら。
そう思ってさらに涙が頬をつたります。
「ああっ! ごめんっ!! そうじゃないんだ!」
「じゃあ、なんなのよ……!」
思わず声をはりあげてしまう私に対して少し驚いた素振りを見せるジル。
でも、そのあとすぐに事の真相がわかることになりました。
「…………ソフィ、もうすぐ誕生日だろう? 何を贈ろうかと迷っていて女性の意見を聞いてたんだよ……」
「え……?」
恥ずかしそうに頭をかきながら目を逸らしながら話すジルの言葉に、私は一気に安心してしまって力が抜けました。
「ソフィっ?!」
その場にへたり込んでしまう私に驚くジルでしたが、すぐさま私に手を差し伸べてくれます。
「心配させてごめん……ソフィの喜ぶ顔が見たくて……なんたってはじめての恋人としての誕生日プレゼントだから……」
その言葉で私は心がほわほわして、同時にジルのことがもっと好きになりました。
「ジル」
「なんだい?」
「……私はどんなものでもいい。ジルに選んでほしい」
「──っ! わかった!」
にこりと笑うジルはとても眩しくて爽やかで、やっぱり私はジルが好きだなって思ったのでした。
(早く誕生日にならないかしら)
人生で初めてそう思えた日でした──
私はソフィ・ルヴェリエといいまして、現在婚約者であるジル・ルノアール様の邸宅にお邪魔しております。
ジル専属執事のクロードさんに「ジル様は少々執務で遅れるとのことでして、よかったらラウンジで紅茶でもいかがでしょうか?」ということで、私はお言葉に甘えてラウンジに来ておりました。
そういえば少し前もこんなことがあったような……と自分の心の中で思いながら、ゆっくりと紅茶をいただき待っておりました。
ジルもそうですが、クロードさんも私の好みの紅茶を知ってくださっていて、いつも私の好きなダージリンティーをいれてくださいます。
その紅茶を何口かいただいたあとに、私は見てしまったのです……。
(あら……お庭にジルがいる……お仕事はもう終わったのかしら?)
一人でお庭にいるジルを見つけて、てっきりお仕事が終わったのです。
私はわくわくしながらティーカップをそっと器に置き、ソファから立ち上がってお庭が見える窓に向かおうとしました。
(ん? あれは……)
ところが先程まで柱の陰で見えなかったのか、ジルの横には一人のメイドさんがいらっしゃったのです。
(あの方は確かよくジルのお世話をなさっているメイドさん……)
確かイザベルさんだったでしょうか……。
ジルのお話の中でも、「イザベルはよく気が利くんだ」「イザベルは芯の通った素晴らしい女性だよ」と聞いたことがあります。
あれ……?ジル……私にはそんな評価してくれたことないのに……。
う~ん。とても胸がじんじんとして痛んで苦しいです。
ジルは私に見せるのとは違う、それでも屈託なく笑う様子にショックを受けました。
私は思わず胸を抑えて唇をかんで、こう思いました。
(あんな表情を見せるなんて……これが浮気というものでしょうか……?)
すると、窓越しにジルと目が合ってしまいました。
「──っ!」
私は思わずジルから目を逸らして、ルノアール邸の玄関のほうへと走りました。
窓の向こうから「ソフィっ!!」と呼ぶ声が聞こえましたが、私は立ち止まらずに逃げます。
ようやく玄関の階段に差し掛かったところで、誰かに腕を掴まれました。
「ソフィっ! 待ってっ!!」
振り返るとそこには息せき切って走ってきたジルの姿がありました。
「ジル……」
私は怖くて「あの女性と懇意にしているの?」と聞けずに涙が目にたまってきてしまいました。
「ソフィっ!」
でもどうしても聞きたくて聞いてしまったのです。
あの恐ろしい質問を……。
「ジル……イザベルさんのことが好きなの……?」
怖くて顔も見れない私の視界は、その瞬間にジルの胸でいっぱいになります。
私は抱きしめられたのだと気づくまで数秒かかりました。
「不安にさせてごめん……僕にはソフィだけだよ。信じてほしい……」
そんなの信じられるわけないわ、と言おうとした次の瞬間にはとても真剣な顔でジルが私に話しかけます。
「本当は隠していたかったのだけど……」
ほら、やっぱりやましいことがあるのでしょう?
もうジルは私のことを好きじゃないのかしら。
そう思ってさらに涙が頬をつたります。
「ああっ! ごめんっ!! そうじゃないんだ!」
「じゃあ、なんなのよ……!」
思わず声をはりあげてしまう私に対して少し驚いた素振りを見せるジル。
でも、そのあとすぐに事の真相がわかることになりました。
「…………ソフィ、もうすぐ誕生日だろう? 何を贈ろうかと迷っていて女性の意見を聞いてたんだよ……」
「え……?」
恥ずかしそうに頭をかきながら目を逸らしながら話すジルの言葉に、私は一気に安心してしまって力が抜けました。
「ソフィっ?!」
その場にへたり込んでしまう私に驚くジルでしたが、すぐさま私に手を差し伸べてくれます。
「心配させてごめん……ソフィの喜ぶ顔が見たくて……なんたってはじめての恋人としての誕生日プレゼントだから……」
その言葉で私は心がほわほわして、同時にジルのことがもっと好きになりました。
「ジル」
「なんだい?」
「……私はどんなものでもいい。ジルに選んでほしい」
「──っ! わかった!」
にこりと笑うジルはとても眩しくて爽やかで、やっぱり私はジルが好きだなって思ったのでした。
(早く誕生日にならないかしら)
人生で初めてそう思えた日でした──