【本編完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
第5話 奏でる音色のその先に
二人きりのお茶会をしてからも、ソフィは変わらずジルへの想いに胸を焦がしていた。
(はぁ……ジルは忙しいかしら……今度はいつ会えるのかしら……)
ソフィは庭園の見える自室の窓際の椅子に座り、外を眺めていた。
今日は来るかもしれない、と毎日何度も外を確認するソフィ。
(そんなに頻繁に来てくれるわけないわ……。私がエミール様と婚約してからはかなり会う頻度が減っていたし)
ソフィは窓から離れると、部屋の奥にあるピアノの前に座る。
繊細で優しい音色がソフィの部屋に響く。
(この曲……よくジルに弾いてあげたかしら……)
ソフィの細く白い指先は、美しくなめらかな旋律を奏でる。
「──っ!」
すると、ソフィの手を包み込むように大きくしっかりした、けど優しい手が添えられる。
「ジルっ!?」
ジルの大きな手がソフィの手を包み込み、やがて二人の協奏曲が流れる。
「もっと聴かせて……ソフィの音色……好きなんだ」
「──っ!」
ソフィの心臓はドクンドクンと大きく鼓動を速める。
手が触れ合い、そして『好き』という言葉が耳元で囁かれる甘い甘い空間に、ソフィはめまいがしそうだった。
(こんなに身体が触れ合って……どうしましょう……息が止まってしまいそうっ!)
二人の重なる音色は、愛しい想いと共に優しく、そして甘く響き渡る。
「幼い頃、ソフィはよくこの曲を僕に聴かせてくれたね」
「……覚えていたの?」
「忘れるわけないさ。僕はソフィの弾くこの曲が好きで好きでたまらない」
(……どうしてそんなに私をドキドキさせるの……? ねぇ、なぜ……?)
ソフィは顔が赤いことを悟られないように必死にピアノに集中する。
けれども、ジルはくすっと笑ってソフィの耳元に唇を近づける。
「耳が赤いよ、緊張しているの?」
「っ!!」
思わず隠すことを忘れて反射的にジルのほうを向いてしまうソフィ。
瞳にわずかに涙を浮かべ、もう限界だというようにぎゅっと唇を結ぶ。
その様子にジルはピアノを弾く手を止め、ソフィの頬に手を添える。
「はぁ……、どうしてそう僕を煽る表情をするんだい?」
「──っ!」
二人の顔がゆっくりと近づき、唇と唇が重なる寸前でソフィは思わずぎゅっと目をつぶってしまう。
すると、ソフィは額に何かが触れる感触がして、びくりと肩を揺らす。
「ん……」
ソフィのおでこにジルの唇が触れる。
目を開いて自分に起こったことに気づき、余計に顔を赤らめるソフィ。
「ジルっ!?」
「ごめん、我慢できなかった……」
優しくもちょっと悪戯な表情を浮かべるジルに、ソフィは恥ずかしさの反動で両手でジルの胸を叩く。
「もうっ!」
ソフィがその次の言葉を紡ぐことはできなかった。
「愛しいお姫様、どうかこの僕をお許しください」
そういって再び甘い罪がソフィのおでこに降り注いだ──
(はぁ……ジルは忙しいかしら……今度はいつ会えるのかしら……)
ソフィは庭園の見える自室の窓際の椅子に座り、外を眺めていた。
今日は来るかもしれない、と毎日何度も外を確認するソフィ。
(そんなに頻繁に来てくれるわけないわ……。私がエミール様と婚約してからはかなり会う頻度が減っていたし)
ソフィは窓から離れると、部屋の奥にあるピアノの前に座る。
繊細で優しい音色がソフィの部屋に響く。
(この曲……よくジルに弾いてあげたかしら……)
ソフィの細く白い指先は、美しくなめらかな旋律を奏でる。
「──っ!」
すると、ソフィの手を包み込むように大きくしっかりした、けど優しい手が添えられる。
「ジルっ!?」
ジルの大きな手がソフィの手を包み込み、やがて二人の協奏曲が流れる。
「もっと聴かせて……ソフィの音色……好きなんだ」
「──っ!」
ソフィの心臓はドクンドクンと大きく鼓動を速める。
手が触れ合い、そして『好き』という言葉が耳元で囁かれる甘い甘い空間に、ソフィはめまいがしそうだった。
(こんなに身体が触れ合って……どうしましょう……息が止まってしまいそうっ!)
二人の重なる音色は、愛しい想いと共に優しく、そして甘く響き渡る。
「幼い頃、ソフィはよくこの曲を僕に聴かせてくれたね」
「……覚えていたの?」
「忘れるわけないさ。僕はソフィの弾くこの曲が好きで好きでたまらない」
(……どうしてそんなに私をドキドキさせるの……? ねぇ、なぜ……?)
ソフィは顔が赤いことを悟られないように必死にピアノに集中する。
けれども、ジルはくすっと笑ってソフィの耳元に唇を近づける。
「耳が赤いよ、緊張しているの?」
「っ!!」
思わず隠すことを忘れて反射的にジルのほうを向いてしまうソフィ。
瞳にわずかに涙を浮かべ、もう限界だというようにぎゅっと唇を結ぶ。
その様子にジルはピアノを弾く手を止め、ソフィの頬に手を添える。
「はぁ……、どうしてそう僕を煽る表情をするんだい?」
「──っ!」
二人の顔がゆっくりと近づき、唇と唇が重なる寸前でソフィは思わずぎゅっと目をつぶってしまう。
すると、ソフィは額に何かが触れる感触がして、びくりと肩を揺らす。
「ん……」
ソフィのおでこにジルの唇が触れる。
目を開いて自分に起こったことに気づき、余計に顔を赤らめるソフィ。
「ジルっ!?」
「ごめん、我慢できなかった……」
優しくもちょっと悪戯な表情を浮かべるジルに、ソフィは恥ずかしさの反動で両手でジルの胸を叩く。
「もうっ!」
ソフィがその次の言葉を紡ぐことはできなかった。
「愛しいお姫様、どうかこの僕をお許しください」
そういって再び甘い罪がソフィのおでこに降り注いだ──