【本編完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
第7話 幼き日の思い出
この日もソフィは窓辺の椅子に座り、お気に入りの本を読んでいた。
女の子が主人公で、美しい蝶が登場するおとぎ話のような本で、ソフィは今までに何度も読んだことがある。
昼下がり、紅茶を飲みながらゆったりと本を読むソフィに、突然物音が聞こえた。
「なにかしら?」
そっと本から目を離して音のしたほうに視線を向ける。
そこには、幼い頃ジルと撮った写真が飾られているフォトフレームがあり、強めの風に煽られて倒れていた。
ソフィは椅子から立ち上がり、ピアノの上に飾られたそのフォトフレームを触り、もとのように立て直す。
「懐かしいわね……」
ふとソフィは5歳頃に撮った写真を眺め、微笑む。
ソフィは5歳、ジルは一つ上の6歳の時にルヴェリエ邸で撮影されたものだった。
◇◆◇
「ソフィ! かくれんぼしよ!」
「いいわよ」
「いつもぼくがかくれてるから、きょうはぼくがソフィをさがしたい!」
「ええ、じゃあそうしましょ」
そういうと、ジルは目をつぶり数を数えはじめる。
ソフィはスカートの裾を持って走ると、庭の裏にある小さな小屋に隠れた。
滅多に人が来ないこの小屋で隠れればそうそう見つからないだろうと、ソフィは自信があった。
案の定、しばらく経ってもジルがソフィを見つけることはできない。
「うまくいっているわね」
見つからないように身体を縮こませて隠れる。
すると、突然風に煽られ、小屋のドアが閉まる。
「っ!!」
ソフィはドアが閉まったことにより真っ暗になった小屋の中で、右も左もわからなくなった。
「どうしようっ……」
手探りで明かりを探そうとするも、何も見つからない。
暗い小屋に取り残されたソフィは次第に不安になって怖くなり、涙が頬を伝う。
「こわいよ……」
恐怖で動けない身体は小刻みに震えだし、足もすくんで動けない。
その時、突然ソフィの瞳に眩しい太陽の光が入り込み、名前を呼ぶ声が耳に届く。
「ソフィっ!」
「ジル……?」
ジルはソフィのもとに駆け寄り、「もうだいじょうぶだよ」と言葉を駆けながら優しくソフィの涙を拭う。
「どうしてここがわかったの……?」
「ソフィならここなんじゃないかっておもって」
ジルの足元は土がたくさんつき、顔にも庭園に咲いているバラで切ったと思われる切り傷もあった。
ジルが自分のために庭のあちこちを探し回ったことを悟ったソフィは、感謝の気持ちを伝える。
「ありがとう、ジル……」
「僕はソフィがどこにいても必ず見つけるよ」
二人で手を繋いで本邸に戻ったときにはかなりの時間がたっており、ソフィとジルは両親たちに大層心配され、叱られた──
◇◆◇
「あの時、ジルは一生懸命私を探してくれた……」
愛おしそうに写真をなでながら、ソフィは呟く。
(いつもは姉のように振舞っていた私だったけど、いざって時に私を助けてくれる……それに……)
ソフィは頬を赤らめて、少し俯く。
(いつだってジルは優しくて……それに私をドキドキさせる……)
ジルを思い出し、ソフィは心が締め付けられるような気持ちになる。
風がソフィの赤い頬を撫でていく──
「失礼しますっ!」
写真を見つめて物思いに耽るソフィのもとに、メイドが慌てたようにやってくる。
「メアリー? そんなに急いでどうしたの?」
ソフィの側近メイドであるメアリーは珍しく息を切らせて走ってきた。
すると、真剣な表情でソフィに告げる。
「ジル様が…………ジル様がお倒れになったとの報せが……!」
女の子が主人公で、美しい蝶が登場するおとぎ話のような本で、ソフィは今までに何度も読んだことがある。
昼下がり、紅茶を飲みながらゆったりと本を読むソフィに、突然物音が聞こえた。
「なにかしら?」
そっと本から目を離して音のしたほうに視線を向ける。
そこには、幼い頃ジルと撮った写真が飾られているフォトフレームがあり、強めの風に煽られて倒れていた。
ソフィは椅子から立ち上がり、ピアノの上に飾られたそのフォトフレームを触り、もとのように立て直す。
「懐かしいわね……」
ふとソフィは5歳頃に撮った写真を眺め、微笑む。
ソフィは5歳、ジルは一つ上の6歳の時にルヴェリエ邸で撮影されたものだった。
◇◆◇
「ソフィ! かくれんぼしよ!」
「いいわよ」
「いつもぼくがかくれてるから、きょうはぼくがソフィをさがしたい!」
「ええ、じゃあそうしましょ」
そういうと、ジルは目をつぶり数を数えはじめる。
ソフィはスカートの裾を持って走ると、庭の裏にある小さな小屋に隠れた。
滅多に人が来ないこの小屋で隠れればそうそう見つからないだろうと、ソフィは自信があった。
案の定、しばらく経ってもジルがソフィを見つけることはできない。
「うまくいっているわね」
見つからないように身体を縮こませて隠れる。
すると、突然風に煽られ、小屋のドアが閉まる。
「っ!!」
ソフィはドアが閉まったことにより真っ暗になった小屋の中で、右も左もわからなくなった。
「どうしようっ……」
手探りで明かりを探そうとするも、何も見つからない。
暗い小屋に取り残されたソフィは次第に不安になって怖くなり、涙が頬を伝う。
「こわいよ……」
恐怖で動けない身体は小刻みに震えだし、足もすくんで動けない。
その時、突然ソフィの瞳に眩しい太陽の光が入り込み、名前を呼ぶ声が耳に届く。
「ソフィっ!」
「ジル……?」
ジルはソフィのもとに駆け寄り、「もうだいじょうぶだよ」と言葉を駆けながら優しくソフィの涙を拭う。
「どうしてここがわかったの……?」
「ソフィならここなんじゃないかっておもって」
ジルの足元は土がたくさんつき、顔にも庭園に咲いているバラで切ったと思われる切り傷もあった。
ジルが自分のために庭のあちこちを探し回ったことを悟ったソフィは、感謝の気持ちを伝える。
「ありがとう、ジル……」
「僕はソフィがどこにいても必ず見つけるよ」
二人で手を繋いで本邸に戻ったときにはかなりの時間がたっており、ソフィとジルは両親たちに大層心配され、叱られた──
◇◆◇
「あの時、ジルは一生懸命私を探してくれた……」
愛おしそうに写真をなでながら、ソフィは呟く。
(いつもは姉のように振舞っていた私だったけど、いざって時に私を助けてくれる……それに……)
ソフィは頬を赤らめて、少し俯く。
(いつだってジルは優しくて……それに私をドキドキさせる……)
ジルを思い出し、ソフィは心が締め付けられるような気持ちになる。
風がソフィの赤い頬を撫でていく──
「失礼しますっ!」
写真を見つめて物思いに耽るソフィのもとに、メイドが慌てたようにやってくる。
「メアリー? そんなに急いでどうしたの?」
ソフィの側近メイドであるメアリーは珍しく息を切らせて走ってきた。
すると、真剣な表情でソフィに告げる。
「ジル様が…………ジル様がお倒れになったとの報せが……!」