【完結】厭世子爵令嬢は、過保護な純血ヴァンパイアの王に溺愛される
第10話 ヴァンパイアの始祖
エリーゼは自室でベッドに座り、一人考え込んでいた。
(私は何もわかってない、何も知らない。ヴァンパイアのこともラインハルト様のことも)
エリーゼは寝台机の上にある自身のネックレスを見る。
そのネックレスは小さなサファイアがついたネックレスであり、彼女が母親からもらったものだった。
(お母様……お父様……)
彼女の中で自身の邸宅──ランセル子爵家が燃える様子、そしてヴァンパイアに襲われたあの夜の記憶がよみがえる。
「──っ!」
エリーゼは自身の手で自分を抱きしめるようにして震えを止めようとする。
(でも、ラインハルト様が助けてくださった……)
彼女の脳裏にラインハルトが返り血にまみれて助けてくれた光景が思い出される。
(私は知らなければ、いけない。ヴァンパイアのことも、そしてラインハルト様のことも)
エリーゼはベッドから立ち上がると、廊下に向かって声をかけた。
「クルト、いるかしら?」
「はい、こちらに」
クルトは部屋の前に戻ってきていたようで、エリーゼの声掛けにすぐに応える。
「クルト、入ってもらえる?」
「かしこまりました」
クルトはゆっくりと扉を開けて入ると、エリーゼの前に跪く。
「何か御用でしょうか」
「ヴァンパイアについて教えてほしい、それとラインハルト様について」
「私では未熟なご説明となってしまいます」
「いいの、クルトの知ってること、見えてることでいいわ」
「……かしこまりました」
クルトはエリーゼに座るように促すと、ゆっくりと語り出した。
「ヴァンパイアは何万年も生き続けている種族です。ヴァンパイアの王はその時代で最もヴァンパイアの血が濃い者がなります」
「ラインハルト様は今最も血が濃い存在ということ?」
「そうです。そして、王は基本的に何千年も君臨し続けるため、ラインハルト様は二代目の王です」
「初代は?」
「初代、つまりヴァンパイアの始祖は人間の手によって封印され、その生涯を終えました」
「不死身ではないの?」
「始祖は人間の黒魔術によって一生動けない身体とされたため、ヴァンパイアの王の継承として自らの心臓をある青年に捧げました。その青年がラインハルト様です」
「──っ!」
エリーゼは頭を殴られたような衝撃を受けて、ベッドに座り込む。
クルトはその様子を見つつも、話を続けた。
「初めは人間のことを恨んでいたラインハルト様ですが、徐々に共存の道を探り始めました。そして今から約700年前の王族と密約を結び、貴族社会へとヴァンパイアが入り込むことになったのです」
「……なぜ、ラインハルト様は共存を考えたの?」
「ラインハルト様のお姉様が人間に恋をしたのですが、その時はヴァンパイアと人間は戦争をしていたため許されない恋でした。そして、お姉様はある日、自ら命を絶ったのです」
「──っ!」
「私が話せるのはここまでです」
エリーゼはあまりに次元の違う話についていけなくなりそうになった。
(でも支えたい、ラインハルト様を。なんで? なんでそう思うのかわからない……)
不思議とラインハルトの支えになりたいと願う気持ちの芽生えに、驚きを隠せなかった。
一方、ラインハルトの自室では、彼がクルトの報告を聞いていた。
「元老院が動き始めたか」
「はい、何やら怪しい動きをしております」
ラインハルトは頬杖をついてふっと微笑むと、低い声で呟いた。
「不審な動きをしたら握りつぶすまでだ」
ラインハルトは机にあった書類を音を立てて破った──
(私は何もわかってない、何も知らない。ヴァンパイアのこともラインハルト様のことも)
エリーゼは寝台机の上にある自身のネックレスを見る。
そのネックレスは小さなサファイアがついたネックレスであり、彼女が母親からもらったものだった。
(お母様……お父様……)
彼女の中で自身の邸宅──ランセル子爵家が燃える様子、そしてヴァンパイアに襲われたあの夜の記憶がよみがえる。
「──っ!」
エリーゼは自身の手で自分を抱きしめるようにして震えを止めようとする。
(でも、ラインハルト様が助けてくださった……)
彼女の脳裏にラインハルトが返り血にまみれて助けてくれた光景が思い出される。
(私は知らなければ、いけない。ヴァンパイアのことも、そしてラインハルト様のことも)
エリーゼはベッドから立ち上がると、廊下に向かって声をかけた。
「クルト、いるかしら?」
「はい、こちらに」
クルトは部屋の前に戻ってきていたようで、エリーゼの声掛けにすぐに応える。
「クルト、入ってもらえる?」
「かしこまりました」
クルトはゆっくりと扉を開けて入ると、エリーゼの前に跪く。
「何か御用でしょうか」
「ヴァンパイアについて教えてほしい、それとラインハルト様について」
「私では未熟なご説明となってしまいます」
「いいの、クルトの知ってること、見えてることでいいわ」
「……かしこまりました」
クルトはエリーゼに座るように促すと、ゆっくりと語り出した。
「ヴァンパイアは何万年も生き続けている種族です。ヴァンパイアの王はその時代で最もヴァンパイアの血が濃い者がなります」
「ラインハルト様は今最も血が濃い存在ということ?」
「そうです。そして、王は基本的に何千年も君臨し続けるため、ラインハルト様は二代目の王です」
「初代は?」
「初代、つまりヴァンパイアの始祖は人間の手によって封印され、その生涯を終えました」
「不死身ではないの?」
「始祖は人間の黒魔術によって一生動けない身体とされたため、ヴァンパイアの王の継承として自らの心臓をある青年に捧げました。その青年がラインハルト様です」
「──っ!」
エリーゼは頭を殴られたような衝撃を受けて、ベッドに座り込む。
クルトはその様子を見つつも、話を続けた。
「初めは人間のことを恨んでいたラインハルト様ですが、徐々に共存の道を探り始めました。そして今から約700年前の王族と密約を結び、貴族社会へとヴァンパイアが入り込むことになったのです」
「……なぜ、ラインハルト様は共存を考えたの?」
「ラインハルト様のお姉様が人間に恋をしたのですが、その時はヴァンパイアと人間は戦争をしていたため許されない恋でした。そして、お姉様はある日、自ら命を絶ったのです」
「──っ!」
「私が話せるのはここまでです」
エリーゼはあまりに次元の違う話についていけなくなりそうになった。
(でも支えたい、ラインハルト様を。なんで? なんでそう思うのかわからない……)
不思議とラインハルトの支えになりたいと願う気持ちの芽生えに、驚きを隠せなかった。
一方、ラインハルトの自室では、彼がクルトの報告を聞いていた。
「元老院が動き始めたか」
「はい、何やら怪しい動きをしております」
ラインハルトは頬杖をついてふっと微笑むと、低い声で呟いた。
「不審な動きをしたら握りつぶすまでだ」
ラインハルトは机にあった書類を音を立てて破った──