【完結】厭世子爵令嬢は、過保護な純血ヴァンパイアの王に溺愛される
第4話 王の婚約者~Sideラインハルト~
明かりがそっと消えると、エリーゼは目を閉じて静かに眠りについた。
その様子を愛しい姫を見つめるまなざしで、ラインハルトは視線を送る。
眠るエリーゼの頬を優しくなでると、椅子から立ち上がり部屋から去った。
部屋のドアを丁寧に閉めて廊下に出ると、そこには一人の少年が立っていた。
「ラインハルト様、元老院の皆様がお部屋にいらっしゃっております。どうなさいますか?」
金髪碧眼という明るい見た目に反し、どこか人形のような落ち着いた表情でラインハルトに話しかける。
「ありがとう、クルト。顔を出すと伝えてくれ」
「かしこまりました」
手を胸の前にかざしながら、深々とお辞儀をしたクルトは、元老院の待つ会議室へと向かった。
先ほどまでエリーゼに見せていた表情とは違い、感情のない顔で廊下をゆったり歩くラインハルト。
華美に飾るわけでもなく、わずかな模様が彫刻されたブラウンの壁が続く。
(元老院の老人か……おそらく今日のことだろう)
ラインハルトが「今日」と指しているのは、エリーゼの家……ランセル子爵邸の様子とエリーゼのこと。
やがて、ラインハルトは廊下の突き当りにある大きな両開きのドアの先にある会議室へと足を踏み入れた。
「お待たせ」
そのラインハルトの言葉と同時に、元老院と呼ばれる数人の年老いたヴァンパイアたちが恭しく礼をする。
その身なりは皆上位貴族のそれをしており、普通に人間であれば同じ人間であると思う様相をしている。
部屋の一番奥は一段高くなっており、そこに赤い手触りの良い高級な生地の椅子が鎮座している。
そこにいつものように座ると、ラインハルトは足を組んでひじ掛けで頬杖をつく。
それを合図に元老院の老人一人がラインハルトに話しかける。
「ラインハルト様、本日もお変わりなくお元気そうでなによりでございます」
優雅に一礼しながら定型文のような決まり文句を言う老人に、ラインハルトは冷たい言葉と表情で突き放す。
「形式はいらない。要件だけ言え」
刺すような鋭い眼光を老人に向けると、老人は一気に表情がこわばる。
「申し訳ございません。それでは本題に……ランセル子爵邸が焼失したというのは本当でしょうか?」
「ああ」
言葉少なく返答するラインハルトに、老人は次の言葉を紡ぐ。
「エリーゼはどうなったのですか……」
「テオ……一つだけ忠告しておく。エリーゼは私の妻になる女性だ。それ相応の態度を示せ」
「……かしこまりました。訂正いたします。エリーゼ様はご無事でしょうか」
「ああ、私の屋敷にいる」
「──っ! こちらにいらっしゃったのですか……それにラインハルト様の妻となる話は真実(まこと)でございますか?」
「クルトを通して伝えたとおりだ」
そういうと、ラインハルトは足を組みなおして深く椅子に座りなおす。
「おやめください……あの娘だけは……」
「もう決めたことだ。それに王は私だ、口出しは許さない」
「……かしこまりました」
「私は仕事がある、失礼する」
「お待ちくださいっ! ラインハルト様っ!!」
テオの制止を聞くこともなく、椅子から立ち上がってクルトが開けるドアのほうへ向かって歩く。
そのままドアは古びた音を立てながら閉まる。
「くそっ! あのガキ……いつか……」
ラインハルトがいなくなった会議室に罵声が飛び交った。
その様子を愛しい姫を見つめるまなざしで、ラインハルトは視線を送る。
眠るエリーゼの頬を優しくなでると、椅子から立ち上がり部屋から去った。
部屋のドアを丁寧に閉めて廊下に出ると、そこには一人の少年が立っていた。
「ラインハルト様、元老院の皆様がお部屋にいらっしゃっております。どうなさいますか?」
金髪碧眼という明るい見た目に反し、どこか人形のような落ち着いた表情でラインハルトに話しかける。
「ありがとう、クルト。顔を出すと伝えてくれ」
「かしこまりました」
手を胸の前にかざしながら、深々とお辞儀をしたクルトは、元老院の待つ会議室へと向かった。
先ほどまでエリーゼに見せていた表情とは違い、感情のない顔で廊下をゆったり歩くラインハルト。
華美に飾るわけでもなく、わずかな模様が彫刻されたブラウンの壁が続く。
(元老院の老人か……おそらく今日のことだろう)
ラインハルトが「今日」と指しているのは、エリーゼの家……ランセル子爵邸の様子とエリーゼのこと。
やがて、ラインハルトは廊下の突き当りにある大きな両開きのドアの先にある会議室へと足を踏み入れた。
「お待たせ」
そのラインハルトの言葉と同時に、元老院と呼ばれる数人の年老いたヴァンパイアたちが恭しく礼をする。
その身なりは皆上位貴族のそれをしており、普通に人間であれば同じ人間であると思う様相をしている。
部屋の一番奥は一段高くなっており、そこに赤い手触りの良い高級な生地の椅子が鎮座している。
そこにいつものように座ると、ラインハルトは足を組んでひじ掛けで頬杖をつく。
それを合図に元老院の老人一人がラインハルトに話しかける。
「ラインハルト様、本日もお変わりなくお元気そうでなによりでございます」
優雅に一礼しながら定型文のような決まり文句を言う老人に、ラインハルトは冷たい言葉と表情で突き放す。
「形式はいらない。要件だけ言え」
刺すような鋭い眼光を老人に向けると、老人は一気に表情がこわばる。
「申し訳ございません。それでは本題に……ランセル子爵邸が焼失したというのは本当でしょうか?」
「ああ」
言葉少なく返答するラインハルトに、老人は次の言葉を紡ぐ。
「エリーゼはどうなったのですか……」
「テオ……一つだけ忠告しておく。エリーゼは私の妻になる女性だ。それ相応の態度を示せ」
「……かしこまりました。訂正いたします。エリーゼ様はご無事でしょうか」
「ああ、私の屋敷にいる」
「──っ! こちらにいらっしゃったのですか……それにラインハルト様の妻となる話は真実(まこと)でございますか?」
「クルトを通して伝えたとおりだ」
そういうと、ラインハルトは足を組みなおして深く椅子に座りなおす。
「おやめください……あの娘だけは……」
「もう決めたことだ。それに王は私だ、口出しは許さない」
「……かしこまりました」
「私は仕事がある、失礼する」
「お待ちくださいっ! ラインハルト様っ!!」
テオの制止を聞くこともなく、椅子から立ち上がってクルトが開けるドアのほうへ向かって歩く。
そのままドアは古びた音を立てながら閉まる。
「くそっ! あのガキ……いつか……」
ラインハルトがいなくなった会議室に罵声が飛び交った。