『絶対言わないでください!』保健室で起きたヒミツ♡の話
「あ!そーだ!
コレ、天ヶ崎くんのじゃない?
ベッドのシーツ替えたら出てきて…」



天ヶ崎くんがしてたネックレス

もちろん指輪もついてた



「うん、オレの…」



うん、知ってた



教室まで届けようと思ったけど

パトロールに来た城田先生に
渡そうと思ったけど

すごく大切な物だと思うから
すぐに取りに来ると思ってたから



コレがなかったから
大会、優勝できなかった?



やっぱり届けた方がよかったね

意地悪だね、私



見たこともない人に

誰かわからない人に

嫉妬してる私は

やっぱり子供だ



「大切な物?」



「んー…」



よく見たら
高校生が買えるような金額の物じゃないって

ジュエリーとかあまり興味のない私でもわかった



年上のカノジョなのかな?

勝手にそんなことまで考えた



「そんなに大事なもの
学校持ってきたらダメだよ
また落としたら大変だし!」



今のも

先生としての言葉じゃなくて



たぶんヤキモチ



「形見なんだ」



「かたみ?
形見…って、おばあちゃんとかの?」



カノジョのじゃなかったんだ



「んーん…お母さん」



「お母さん…?
天ヶ崎くんのお母さんて…」



「オレが中学の時、病気で亡くなった」



「そーなの…」



「うん…」



「じゃあ
お母さんのためにいつも頑張ってたんだ」



「んー…それもあるけど…

好きな人のために頑張ってた

オレに好きな人作りなって言ってくれた人

そしたら学校来たくなるって…

強くなりたくてボクシング部にも入った

そしたらその人も
オレのこと好きになってくれるのかな?って…

ベスト8じゃ、まだダメでしょ

優勝したら
好きだって告おうと思ってたんだけどな…

今言ってもいろいろ無理なのわかってるし…」



天ヶ崎くんの話を

ドキドキしながら聞いてた



私だってわかることを

私じゃないみたいに話す彼を




「指輪、落としたんじゃなくて
わざとここに置いて行ったんだ」



「え…?」



「センセーにあげたいな…って」



「だって、それ…
すごく大切な…」



「うん、大切
センセーのことも大切だから…

いつかセンセーにも
ちゃんとこーゆーのあげたい

今は
ぜんぜん…
いろいろ…
ダメだから

もっと強くなって…
もっと大人になったら…

ちゃんとセンセーのこと…」



すごく大切な物を

こんな私にあげたいって思ってくれてる彼を



「天ヶ崎くん…」



私は…



「センセー、まだ返事しなくていいから…

返事されたら
たぶんオレ
もぉ学校来なくなるのわかってるから…

だから…
卒業式まで、言わないで…」



「うん…」
< 35 / 64 >

この作品をシェア

pagetop