『絶対言わないでください!』保健室で起きたヒミツ♡の話
「センセー、絆創膏ある?」



なんだ…

わざわざ私に会いに来てくれたのかと
ちょっと思ったのに



「うん、どーした?」



「ここ、名前書いとくね」



【保健室利用者名簿】



「うん」



天ヶ崎くんがそこに書く
最後の名前


もぉここに来るとこもない



「ハイ…自分で貼れる?」



私が渡した絆創膏を
天ヶ崎くんは

私の首元に貼った



「ん?なに?」



「ここ、赤くなってた」



「え、ウソ…なんだろう…」



「カレシ?」



カレシなんていません

また揶揄ってる?



「ぜんぜん痛くないよ」



「オレがヤダから…
見たくなかった、そーゆーの」



「ホントに何もないよ」



「オレには言えないんだ」



「あ…何もなくなかった」



「あった?」



「菊池さんにこの前噛みつかれて…
だから、ぜんぜんそんなんじゃなくて…」




必死に弁解してる


別に
もぉ関係ないのにね



「菊池でも、嫌なんだ

センセーに触らないでほしい

アイツにまで嫉妬してるとか
オレ、かっこ悪い…

菊池に言わないでね」



どういう意味で取ったらいいかわからないこと
言わないでよ


言葉に困る



「センセー、オレ…
卒業したら、もぉセンセーに会えない?」



「またいつでも遊びに来て…
毎年、卒業式は寂しくなるんだよね
みんなにもぉ会えないな…って…」



君だけが特別じゃないって言い方を
してしまう



「菊池とは
卒業したら旅行行く約束してるのに?」



「そーだね…

天ヶ崎くん、推薦で大学行くんだってね
菊池さんから聞いたよ
頑張ってね」



「アイツ、おしゃべり…」



「いろいろ楽しみだね」



「別に…」



「応援してるね」



最後まで先生ぽいことを言おうとしてる
自分がいる



「何を応援してるの?

オレ、センセーがいないと頑張れない

センセーがいたから3年間頑張れたんだ

センセーのこと
センセーって呼んでたけど…

この人がセンセーじゃなかったら…って
何度も思った

好きになった人が
たまたまセンセーで…

オレはたまたま生徒で…

オレは子供で…
センセーに迷惑かけた

少しでも大人になったら
センセー
オレのこと好きになってくれるかな…って

オレが卒業したら…
生徒じゃなくなったら…

センセー
少しでもオレに興味持ってくれるかな…って」



目の前で必死に

私に伝えようとしてくれてる彼を



「天ヶ崎くん…

少しじゃないよ」



私のために

変わろうと努力してくれた彼を



「天ヶ崎くん…

少しじゃなくて…いっぱい好き

待ってたのは…
ずっと待ってたのは…私だった


私、天ヶ崎くんが、好きだよ

もぉ、先生じゃないもん」



愛おしいと思った



先生としてじゃなくて

私として



彼を

特別だと思った



「センセー…

センセーの生徒でよかった

明日からもずっと…好きだよ」



天ヶ崎くんが

優しく私を抱きしめた



「卒業、おめでとう

ありがとう…3年間生徒でいてくれて…

ありがとう…好きになってくれて…」



ゆっくり天ヶ崎くんの影が重なる



ドキン…



袴に締め付けられた胸が鳴る



「あ…ダメ…
学校だから…」



「卒業したし、いいじゃん」



「ダメ…
誰か来そうだから…」



「また子供って思った?」



「思ってないよ
前の天ヶ崎くんなら押し倒してたでしょ」



「うん、たぶん…
じゃあ、明日レンレンの家行ってもいい?」



「レンレンて…
私、実家だから、まだダメ…」



「お母さんが心配するなら
電話してから行くけど…」



「あ、それ…
聞いたことあるセリフ」



「ハハ…わかった?
じゃあ、オレんち来る?
実家だけど、親いないから…」



「中学生みたいなこと言わない!」



「じゃあ、どこならキスしていいの?」



キス…

するんだ

私達
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