『絶対言わないでください!』保健室で起きたヒミツ♡の話
「佐伯先生ー!」



「あ、はーい!」



ほら、誰か来た


天ヶ崎くんをカーテンに隠した



「城田先生!」



こーゆー時に来るのは
この人だと思った


何もなかったみたいにしてるけど
まだ胸がドキドキ鳴ってる



「袴姿よかったですよ」



「あ、ありがとうございます」



衿が乱れてないか気になった



「この前までここの制服着てたのにね
懐かしいな…
佐伯先生が卒業した日を思い出しました」



「私も憶えてますよ」



あの日
城田先生に自分の想いを伝えたくて

ずっと考えてた言葉

ずっと隠してた気持ち


「好きです」


伝えようと
卒業式のあと部室に行ったけど

言えなかった



「城田先生、ありがとうございます
最後、握手してください」


それが精一杯だった



大人の男性に気持ちを伝えるのは
すごく勇気がいることだった



握手しただけで
手が震えて胸が熱くなった


私は子供だった


ただ好きって気持ちだけで
何もできなかった



だから
天ヶ崎くんの行動は
すごく勇気のいることだったと思う


彼がどんな気持ちで私に…

彼がどんな気持ちで大人になろうとしたか…



よく考えると
天ヶ崎くんがもっと愛おしくなる



「佐伯先生…握手…」



城田先生が手を出した



先生も憶えててくれたんだ

ちょっと嬉しくなる



城田先生の手を握った



私が好きだった人

私が好きだった先生



「城田先生
これからもよろしくお願いします

ずっと、私の先生でいてください」



「こちらこそ!」



胸は鳴らなかった



私が好きな人は

もぉこの人じゃない
< 60 / 64 >

この作品をシェア

pagetop