S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
ラヴァルさんはそんな調子だけれど、なぜかエツはまた険しい顔をしている。今度は気のせいではないと、はっきりわかるくらいだ。
もしかして、こういう口説き文句みたいなのを聞いているのが嫌なのかな。エツってキザなセリフとか苦手そうだしね。
勝手にそう解釈し、これ以上私がいるとさらに雰囲気を悪くしてしまうかもしれないので、この辺で部屋を出ることにした。時間的にもこれが限界だ。
ふたりのことが気になって仕方なかったが、食事が終わった頃に部屋へ伺うと、ラヴァルさんはほろ酔いで上機嫌だった。エツも「アニメ勉強しておきます」なんて茶化していて普通だったし、やっぱり女がいないほうがよかったのだろう。
お風呂は部屋についているが大浴場の説明もして、あとはおひとり様で気楽に楽しんでいただく。エツもここで帰るため、ふたりで挨拶をしてラヴァルさんとお別れした。
エツを見送るため玄関に向かって一緒に館内を歩きながら、両親の目を盗んで話をする。
「ラヴァルさん、満足してくれたかな」
「ああ。部屋からの景観も綺麗だし、料理も美味しかったし、また泊まりに来たいと言ってたよ。仲間にも紹介しまくるって」
「本当? よかった~」
どうやらお気に召してもらえたようなので、私はほっと胸を撫で下ろした。