S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「ありがとね、エツ。ひぐれ屋を知ってもらうきっかけを作ってくれて。要人の接待をするっていう貴重な経験もできてよかった」
笑顔でお礼を言うと、彼はわずかに口角を上げた。しかしすぐに真面目な顔になって、なにげない調子で問いかける。
「明日も花詠がラヴァルさんを担当するのか?」
「んー、お母さんがなんて言うかによるけど、普通は同じ人がチェックアウトまで担当するから、このまま私になりそうだね」
翌日の業務は朝食をお出しするところから始まる。私がやることになったら、朝からまたラヴァルさんと顔を合わせることになるだろう。
「もし、明日また誘われても絶対に断れよ。外交問題とかそういうのは気にしなくていい」
私の返答を聞き、エツは表情を変えずにそう言った。珍しく心配性なので、私はクスクスと笑う。
「一度断ったんだし、もう誘われないでしょう。そもそも、デートなんてできるわけないよ。仕事があるっていうのもそうだけど、あんなイケメン閣僚と街なんか歩けっこないし」
外国人な上にハリウッドスターばりの容姿で、絶対に注目を浴びる人の隣になんていられない。その時にはきっとSPもつくんだろうし、一緒にいたら気が気じゃないだろう。