S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「でも夢見させてもらった~。リップサービスだとしても、あんな風に甘い言葉をかけられると嬉しいもんだね。うっかり惚れちゃいそうにな──」
「絶対に惚れるんじゃねぇぞ」
うっとりしている最中、鋭い目で睨まれると共にドスの効いた声が飛んできてギョッとした。
き、急に口が悪いし、怖っ。こんなに忠告してくるって、ラヴァルさんはそんなに惚れてはいけない相手なんだろうか。
「え……ラヴァルさんって実はすっごく悪い男なの?」
「違うけど、お前に相応しい相手じゃないだろ。どう考えても」
ツンとした調子で言われ、若干カチンとくる。間接的に私をディスっているよね?
「なんか失礼」
「事実を言っただけだ。一国を担う大臣と、老舗とはいえ経営が傾きかけてる旅館の若女将とじゃ格差がありすぎる」
「もちろんわかってますよ! こんな凡人じゃ釣り合わないってことくらい」
私は決してラヴァルさんとどうこうなりたいわけではないのに、勝手に分不相応だという風に言われるのはどうにも腑に落ちない。
怒りがむくむくと込み上げてきて、口調も荒っぽくなる。