S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「やっぱり内緒にしなきゃダメかな」
本音は声を大にして言いたい。私たちは愛し合っているんだって。
ちょっぴり不服そうにしていると、彼はぎゅっと眉根を寄せて私の父のマネをし始める。
「〝ふたりで隠れてイチャコラしてたのか! 俺があれだけ関わるなと言ったにもかかわらず!〟って、激怒した親父さんが引き離そうとする未来が見える」
「た、確かに……」
「ただ付き合ってるって報告するんじゃなくて、親父さんたちも納得して俺たちの交際を認めさせるのが一番いいだろ」
エツの言う通り、父たちに有無を言わせない理由があれば厄介事は避けられるだろうけど、それは難しそう。
うーんと唸る私の手に、彼は自分のそれを重ねて頼もしい口調で言う。
「心配するな。俺に考えがある。それを実行するために聞いておくけど」
言葉を区切ってこちらを向く彼の綺麗な瞳と、視線を絡ませる。
「お前、俺と結婚できる?」
唐突にドキッとする質問を投げかけられ、私は目をしばたたかせた。