S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「昨日、アイスランドで火山が噴火したらしい。ヨーロッパ側に火山灰が到達すると予想されてるから、飛行機は欠航する可能性が高いと思う」
「えぇぇ⁉」
飛行機が欠航⁉ どんだけトラブルに巻き込まれるのよ、今日の私!
ぽかんと口を開けて驚愕する私に、エツは涼しい顔のまま自分のスマホの画面を向ける。そこには確かに火山の噴火を知らせるニュースが載っていた。
飛行機に関する情報も領事館で発表するが、まだ航空会社からの連絡はなさそうだという。私が利用している日本アビエーションのサイトを開いてみても、やはり欠航の情報は出ていなかった。
ギリギリに決まることもあるしもう少し待ってみないとわからないけれど、こういう事態に詳しいエツが言うのだから、最悪の場合も考えておいたほうがよさそう。
「もう一泊することになったらどうしよう。旅館はあと三日くらいは私がいなくても大丈夫だろうけど……」
「今の時期、毎年暇だもんな」
「閑散期と言ってくれる?」
さらっと嫌味を言う相変わらずの彼をじろりと睨む。が、今は文句をつけている場合ではない。