S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
参加者と話している大使も、周りの大人たちも彼女に気づいていない。私はどうにも放っておけず、勇気を出して声をかけてみることにした。
さりげなくピアノに近づき、こっそり覗いてみると、レアナちゃんは私を見上げてビクッと肩を跳ねさせた。そして、服を着たうさぎのぬいぐるみを胸にぎゅっと抱きしめる。
「突然ごめんね。レアナちゃん、元気がないみたいだけどなにかあった?」
笑顔を絶やさず、ひとまず日本語で話しかけてみたものの、彼女はもじもじするだけ。日本語も勉強していると言っていたけれど、やっぱりまだ伝わらないか。
英語でもう一度問いかけようとした瞬間、小さな唇が動き出したので注目する。ところが返ってきたのはフランス語で、私にはお手上げ状態。
これは困ったぞと頭を悩ませていた時、誰かが私の肩をトントンと叩いた。
「カエさん、どうしたの? そんなところで」
「ラヴァルさん!」
振り向いた先にいたのは、麗しの救世主だ。ナイスタイミング!と、私は胸を撫で下ろしてすぐに説明する。
「レアナちゃん、元気がないみたいで気になるんですが、フランス語がわからなくて」
「ああ、OK」