S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす

 会場を出て奥まったところにある小部屋に案内されると、そこはこぢんまりとした応接スペースになっていた。レアナちゃんをソファに座らせ、ラヴァルさんがドアを閉める。


「大使には僕がトイレに連れていくと言っておいたよ」
「ありがとうございます」


 ラヴァルさんなら信頼されているだろうから安心だ。感謝しつつ私もレアナちゃんの隣に座り、コンパクトな和装バッグの中からハンカチを取り出す。

 会場を出る時に、ドリンクを提供しているカウンターで炭酸水をもらってきた。グラスに入ったそれを染みの部分に垂らすところを、ラヴァルさんが興味深げに覗き込む。


「これはスパークリングウォーター?」
「はい。二酸化炭素が汚れを浮かすんですって。応急処置ですけど、赤ワインは放っておくと取れづらくなるので、こうしておくほうが多少はいいかと」


 ハンカチで優しく叩いて水気を取っていくと、まだあまり時間が経っていないおかげでだいぶ染みが薄くなってきた。それを見ていたふたりが「Ouah!」と声を上げる。

 できる限り綺麗にして、だいぶ染みが目立たなくなったぬいぐるみをレアナちゃんに返す。
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