S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「たった一度会っただけなのに……フランスに帰ってからも君のことが忘れられなかった。自分でも驚いているけど、こんなの初めてなんだ。どうにかして手に入れたくなる」
彼の声や表情から真剣さが感じられて、もう冗談だと突っぱねられなくなった。胸が激しくざわめいて、顔に熱が集まる。
ラヴァルさんが本当に私を想ってくれているならとても光栄だけれど、もちろん告白を受け入れることはできない。なんとか動揺を落ち着けて口を開く。
「申し訳ありませんが、私は……」
「君がエツトのことが好きなのはもちろんわかっているよ。でも、人の気持ちは変わりやすいものだ。僕に心変わりする可能性もゼロじゃない」
彼はその可能性に賭けようとしているらしいが、それでは彼の大切な時間を無駄にしてしまう。これだけははっきりしている。
「いいえ、心変わりはしません。いくらラヴァルさんが好意を寄せてくださっても」
きっぱりと言い切り、今度は私が手を重ねて彼のそれを離そうとした。彼はもう片方の手で頭を抱え、憂いだため息を吐き出す。
「まいったな……一途なところも愛おしい」
「なんでそうなるんです!?」