S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす

 わずかに微笑み「残念」と言って、濡れた指にぺろりと舌を這わせる姿が官能的すぎて文句も出てこない。

 彼は私の身体を起こして、乱れに乱れた私の浴衣を直しながら言う。


「まあいい。シアトルに行ったらデートナイトするから」
「デートナイト?」
「子供を親やシッターに預けて、夫婦で夜にデートすること。アメリカは夫婦の時間を大切にする国だからな」


 なるほど。アメリカでは子供中心というより夫婦円満でいるほうが大事だというのは知っていたけれど、そのうちのひとつがデートナイトなのか。

 パパとママになっても、いつまでも男と女の関係でいられるのは素敵だ。そんな時間を過ごせると思うと、この先の海外生活もわくわくしてくる。

「楽しみ」と微笑むと、エツも表情をほころばせて私の頭を優しく抱き寄せる。


「どこへ行こうと、何歳になっても、お前への愛は保証する」


 幾度となくかけてくれる、とびきり甘いご褒美の言葉。酔いはいつまでも覚めやらぬまま、口づけを交わして私も旦那様への愛を誓った。

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