S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
興味がなかったわけではなく、そもそも異性や恋愛に構う余裕がなかった。私は中学に入ってから本格的に若女将の見習いをするようになり、休日も皆のようにショッピングやカラオケをして遊ぶことは稀だったから。
礼儀作法はもちろん、旅館の間を演出するために花道や調度品の知識も身につけなければならない。お得意様の顔と名前も、料理の説明も。覚えることが山積みで、試験前なんて地獄だった。
それでも、お客様が『頑張ってね』とか『女将になるのを待ってるよ』とか、温かい言葉をくれるから励まされた。さりげない気配りに気づいてもらえた時はとても嬉しいし、もっとお客様の喜ぶ顔が見たいと思う。
めちゃくちゃ大変だったけれど不思議と嫌にはならなくて、この仕事は自分に合っているのだと感じられた。
高校生になると周りには彼氏を作る子が急増して、合コンみたいなことも頻繁にやっているようだったが、私のライフスタイルは変わらない。よく誘われたが都合がつく日は少なかったし、そもそも合コンは苦手だから参加しなくていいやと思っていた。
そんな風に過ごしていたら、高校に入ってからできた友達との間でちょっとしたトラブルが起こった。