S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす

「助けてくれてありがとう。でも、私が自分でなんとかしなきゃいけなかったの。あの人はVIP待遇を約束されてる人だから」
「セクハラとロリコン疑惑で有名な金融会社の社長だろ。知ってるよ」


 そっけなく返された言葉には嫌味が込められていた。

 エツの言う通り、島田社長はセクハラで訴えられた過去を持つ。不起訴となったが、その後も若い子に手を出しているのではないかと、時々ワイドショーを賑わせている。

 それは知っていたが、ここではお客様なのだから失礼があってはいけないのだ。

 エツの行動はきっと社長を不快にさせてしまったはず。とはいえ、彼からすれば人助けをしただけなので、当然悪びれてはいない。


「俺は別にここの従業員じゃないからな。VIPだろうがなんだろうが関係ない」
「そうだけど、こっちの立場ってものが……」
「若女将はお触りOKってこと?」
「んなわけあるかい!」


 ついツッコんでしまった。もちろん触れられるのは嫌だし、お客様じゃなかったら肘打ちをくらわせていたわよ。

 堂々巡りのやり取りをしていると、やってきた別のお客様に声をかけられ、そちらの対応をしているうちにエツは大広間へ戻っていった。
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