S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「あれがもう七年前だなんて信じられないね。お父さんがうるさいから、エツにも迷惑かけたくなくてあれから意識的に会わないようにしてたんだけど」
「俺も。お前の親父さん、本当に頑固だよな」
呆れたように言われ、私も共感しまくりで苦笑いした。
エツもあの一件を気にして距離を置いていたんだ。やりきれなさと、私自身が嫌われていたわけではないとわかって安堵が入り混じる。
その時、スライスされたフォアグラが乗ったリッチな前菜が運ばれてきたものの、彼はそれを気に留めず私に視線を向けたままでいる。
「今ここにいるのは俺たちだけだ。誰にも文句は言われないし、止めることもできない。食事していても、ひと晩過ごしたとしても」
ドキリと心臓が音を立てた。
そう、今日だけは誰にも邪魔されない。なにをしようが私たちの自由なのだ。
「絶対、秘密ね」
まるで共犯者のような気分で言うと、彼は不敵に口角を持ち上げた。
今夜は間違いなく特別な一夜になる。スリルや背徳感に似たものを覚えて心拍数が上昇していくのを自覚しながら、私もフォークを手に取った。