S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
美味しい食事をゆっくり楽しんだ後、スーパーで軽く買い物をしていよいよエツの自宅に向かった。
領事館から徒歩十五分くらいだろうか。イル川沿いの静かな通りに、ヨーロッパらしい趣のある三階建てのアパートがあった。ここの最上階に彼の住処がある。
まず足を踏み入れたリビングダイニングは家族で暮らせそうなくらい広く、それとは別にゲストルームまでついているそう。白を基調とした内装にソファやカーテンの青が差し色になっていて、センスのよさが感じられた。
まったく散らかっていないホテルライクな部屋をぐるりと見回し、私は感嘆の声を上げる。
「すごく綺麗だし広い! これも外交特権?」
「そう言われても仕方ないとは思ってる」
私の冗談に対する返しにクスクス笑っていると、テーブルにワインのボトルを置いたエツは、ネクタイを緩めながら提案する。
「先にシャワー浴びてくれば? どうせ酔ったらそのまま寝るんだろうから」
「今日はそんなベロベロにはなりませんー」
「どうだか」
首元をくつろげて気を許した笑いをこぼす彼に、私は平静を装いつつも内心ドキドキしまくっている。