S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
──翌朝、私はダブルベッドの上で目を覚ました。周りを見ても、もちろん私ひとり。
昨夜はそんなにたくさん飲んだわけではなかったが、さすがに疲れていたのか、あれからしばらくして睡魔に襲われた。それ以降の記憶がないので、おそらくソファで眠ってしまい、エツがここへ運んでくれたのだろう。
ということは……まさか、お姫様抱っこされてた? 人生初の尊い体験をなぜ覚えていない!?と、起きて早々ベッドの上で頭を抱えたのだった。
結局、それ以上はなにもない一夜だったな。まあ、私たちが甘い展開になるわけがないけれど。自分には男性をその気にさせる色気がないと思い知らされたようで、少々ヘコむ。
ただ、朝からプライベート感満載のエツを見られたのは得した気分だった。
シャワーを浴び終えた上半身裸の彼と鉢合わせ、そのセクシーすぎる姿は直視できなかったものの、一緒にコーヒーを飲んで爽やかな一日の始まりを迎えられた。
それから準備をしてアパートに別れを告げると、外交官ナンバーが輝かしい彼の車でフランスの街を走る。
約二時間のドライブはとても清々しく、街並みを見ながらエツが観光ガイドさながらにあれこれ教えてくれて楽しかった。運転する彼を見るのも初めてだが、この人はなにをしてもカッコいいんだなと恨めしくなる。