S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
「やっぱり石動家に負けていられないわ。この屈辱は絶対に晴らしてやるんだから」
額に手を当てる私に、母は気づいていない。エツってば、手助けしてくれるのはありがたいけど、お母さんとも険悪になってどうする。
この先どうなることやら。まず、エツは私のことをどう思っているのだろう。
約一年前の些細な発言を覚えていてわざわざ来てくれたり、私が結婚していないと知って『よかった』なんて言ったり。
ちょっとは脈があるのかも……なんて期待した途端、母には遠慮のない発言をして怒らせるし、私と仲よくやっていく気はなさそうな気もする。
恋心を実らせて、もう一度彼と許嫁の関係に戻りたい……なんて淡い希望は夢のまた夢のようで、私の口からはため息しかこぼれなかった。