S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
ジェラシーと溺愛

 エツがひぐれ屋の下見をしにやってきたのは、約一年ぶりに再会した日から四日後のことだった。その際、来日予定のノエ・ラヴァルさんという方について詳しく聞いた。

 ラヴァルさんは昨年、三十三歳にしてフランス内閣の最年少環境大臣に就任したのだという。エツとは在外公館に勤務している最中のパーティーで知り合い、ラヴァルさんの気さくな性格と、歳が近いこともあって意気投合したらしい。

 彼はこれまで何度も来日している親日家で、日本語もとても上手だそう。それを聞いて、私だけでなく両親も内心とっても安心したに違いない。

 ラヴァルさんが来日した際の詳しい予定や、食事の好き嫌いなどについても、細かく情報を仕入れた。

 それから、エツは宿の中で最もランクの高い部屋と貸切風呂を確認し、実際に会席料理を食べて、紹介するのに相応しいと納得してくれたのだった。

 まさかこんな風にエツとの繋がりができるとは。フランスでの出来事はもちろんすべて秘密で、必要以上に話をしない関係を演じなければいけないが、何度も会えるのは嬉しい。
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