S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす

 しかし、父はどうしても信じたくないらしい。


「悦斗くんは外交を行う立場の者だ。この接待がうまくいったら自分の手柄にできるってだけかもしれない。花詠も、少しよくされただけで気を許すんじゃないぞ」


 エツは自分の利益ばかり考える人じゃないよ、という反論をぐっと飲み込む。

 いつまでも石動家を目の敵にしている父に嫌気が差すも、彼に好意を持っていると感づかれてもいけないので曖昧に返事をしておいた。

 その時、ガラス戸の向こうにサングラスをかけた外国人の男性と、スーツ姿のエツが見えた。同時に母が「お見えになったわ」と言い、私たちは姿勢を正す。

 エツが扉を開けて現れたブラウンの髪の男性は、身長はエツより少しだけ高いくらいだが、目を見張るようなオーラを放っていた。

 長めの前髪を斜めに分け、サイドの髪は耳にかけたヘアスタイルが外国人らしい。ネイビーのジャケットスタイルは、首にラフにかけたスカーフで一気にオシャレ度が増している。

 そしてサングラスを外し、翡翠のような色の綺麗な瞳が露わになった瞬間、つい目を奪われた。……カッコよすぎる。
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