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 3人で階段を下りながら、千真の頭には疑問符が大量発生していた。一体、なぜ、どういうことなのか。

「あれ? メッセージくれたのって、賀永さんだよね?」

「……はい」

 ああ、逃げられない。千真は悟った。
 旭は律儀に千真のメッセージの内容を覚えてくれていて、いや、あれは旭宛でなかったとしても、旭に送ったものなのだから旭が見ているのは当たり前なのだが、それで駿介の手伝いを千真に頼むことにしたのだろう。駿介の怪我が、本当に千真を庇ったときに負った怪我かどうかは定かではないが、お手伝いします、というメッセージを送ったことは事実である。

 千真は、旭から受け取った駿介の鞄を抱き締めると、小さくため息を吐いた。すると、ひょい、とそれを取り上げられる。

「ひとりでいいから、帰れ」

「え?」

 ブスっとした表情の駿介だった。イライラするのは仕方ないにしても、千真に当たることはないのではないだろうか。いや、そもそもの原因が千真だったのなら、千真に対してイライラするのも判らなくはないのだが。

「大神さんにお願いされたことなので、付き添います」

 千真もムッとした顔で駿介から鞄を取り返すと、すぐにまたそれを取り上げられた。

「俺は頼んでねぇ」

「おおがみさんじゃなくて、おおがみさんに頼まれたんです!」

「一緒じゃねぇか。判りづれーよ」

「そ……!?」

 そんな子供みたいなこと、言う!? 信じられない、と口をわなわなと震わせて、千真は取り上げられた駿介の鞄を引っ張るも、駿介も今度は簡単には取られないよう、しっかりと握っている。左手なのに、なんて握力だろう。

 千真は唇を噛んで顔を上げると、息を吸い込んだ。
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