幸せのつかみ方
「直幸。離婚は俺とお母さんの問題だ。お前のせいなんかじゃない。直幸が気に病むことはないんだ」
裕太が優しい声で話しかける。
「俺たちは夫婦ではなくなったけれど、直幸とは親子だし、俺たち3人は今でも家族だと思ってる」
そう言った裕太に直幸は
「何言ってんの?意味が分からないんだけど?」
と冷たく言い放った。
「え?わかんない?」
「うん」
「わかんないかー」
分からないと言われて動揺する裕太は、腕を組んでうーんと唸り、ちらりと助けを求めて私を見た。
私は直幸に伝えれる言葉を捜すが、思い浮かばない。
重たい空気を更に重くするように直幸が、
「父さんと母さんは離婚した。家族の形なんてきれい事はいらないよ」
と呟いた。
直幸の言葉に彼の心の傷を知り、ただただ悲しくなる。
そして、
「ただ、俺は・・・
二人には笑ってて欲しい・・・・」
そう言って直幸は床に倒れるように横になって寝息をたて始めた。
私の目には涙が滲み、裕太は直幸を揺すって無理矢理ソファに横に移動させた。
直幸にタオルケットをかけ、
「優しい子に育ったな」
と裕太は言い、私はそれに何度も頷いた。