幸せのつかみ方
8年前

ご縁を感じる出会い

蒸し暑い夏の夕方。
日曜日のスーパーは野菜の特売があって、とても混んでいた。
一週間分の食材をまとめて購入したのでかなりの量になった。
夫の裕太に車で連れてきてもらえばよかったかなと思いつつ、買い物袋を持ち直した。

お肉が傷む前に帰りたい。
少し早歩きで歩いていると、前方にカートを押すおばあさんが一人、立ち止まっていた。

近づくと、おばあさんが手押しのカートを押したり引いたり、持ち上げたりして右往左往していることが分かった。
カートの後ろタイヤが溝の隙間に挟まって動けなくなっていたのだ。

「こんにちは。何かお手伝いしましょうか?」
話しかけると、おばあさんはこちらに顔を向けた。
「そう?困ってたのよお。タイヤが嵌ってしまって動けなくなってねえ」
おばあさんは少しほっとした顔を見せた。

「では、持ち上げてみますね。触ってもいいですか?」
「うん。いいよいいよ。お願い。いくらでも触って」
その言い方に少し笑ってしまったが、すぐに眉間に皺が寄ってしまう。
(なにこれ、ものすごく重いんだけど)

タイヤがぴったりとはまってしまったせいか、それとも重たい荷物のせいか、カートを持ち上げようにもピクリとも動かない。

私はひじに掛けていた買ったばかりの食料品の入った買い物袋を道路に下ろし、全身で持ち上げることにした。・・・が、びくりともしない。

(大きなかぶみたいだな)
なんてことを思いつつ、再チャレンジ。
(それでもかぶは抜けませんってか?)
おバカな想像を振り払って、このままで動きそうにないカートを見つめた。

「これって何が入ってるんです?」
「ん?さっき買った野菜。今日、ジャガイモとか玉葱とか安かったから、ついついたくさん買っちゃったのよお」
「ああ、確かに安かったですよねえ・・・ちょっと待ってくださいね。ふんー----!」

全力で持ち上げたら少し浮いた。
でも、溝の隙間からタイヤが出るほどではない。
「どう?」
心配そうにおばあさんが覗き込んだ。

「うーん。重たくて・・・もう一回やってみますね」
手伝うと言ったものの、予想以上の重さだ。

「んんんー--!」
再チャレンジしていると、後ろから
「どうかなさいましたか?」
と声をかけられた。

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