幸せのつかみ方
黒い服を着たスタッフに案内されて店内に入る。
ライトを控えめにした店内は、壁一面がガラスで覆われていて、窓の外はきらきらと輝く夜景が広がっている。
「わあ・・・綺麗・・・」
思わずつぶやいてしまった。
「ありがとうございます」
スタッフににこやかに微笑まれ、椅子を引かれる。
ぎこちなく座る。
なれない雰囲気のレストランに緊張する。
「オーダーは浅倉様から承っております。念のためですが、アレルギー等が何かございますか?」
「ありません」
「かしこまりました。それでは食前酒からお持ちいたしますね」
「お願いします」
返事をする裕太の顔を見る。
裕太と私は真正面に座っていない。
夜景を見やすくするために少しだけ斜めの位置に座っている。
丸テーブルなのもそのためだろう。
真正面に座られても、真横に座られても落ち着かないのは間違いない。
窓の外を見ていた裕太がこちらを向く。
目が合う。
目が合ったことをごまかすために、瞬きをしながら、今度は私が窓の外を見た。
窓の手前は海があって真っ暗なのに対し、その奥は向こう岸の夜景がきらきらと輝いている。
水面に反射した光は瞬いていて幻想的で美しい。
店内に流れるゆったりとした弦楽のクラッシックミュージックが、優雅な雰囲気を演出していた。
〈夜景の綺麗なレストラン〉
〈いわゆるデートスポット〉
不穏な単語が頭をかすめる。