幸せのつかみ方
私たちはお酒が飲めるインド料理のお店にきた。
奥にあるテーブルに着いた私たちは、メニュー表を開いた。
テーブルに呼び出しボタンがなかったので、直幸が振り返って手を上げ、店員さんを呼んだ。
「このセットを二人分と、ジンバックと、生ビールをお願いします」
「以上でよろしいですか?」
「はい。お願いします」
さらっと二人分の注文をして、メニューを端に立てた。
直幸を見ていると大きくなったなあ~と感慨深くなる。
店に入るときはドアを開けてくれ、私が入るまで持っていてくれた。
座る前にほんの少し、椅子を引いてくれた。
男の子が男の人に成長しているのを目撃してしまった。そんな気分だ。
「なに見てんの?」
直幸はネクタイを緩め、袖をめくりながら聞いてくる。
「いやあ、大きくなったなあと」
「ははっ。そりゃビールくらい飲むようになるよ」
炭酸が飲めるようになったことを言ってるわけではないのだが、気付いてないほどエスコートが自然にできる様な大人になったのだな。
週末の店内はにぎわっていた。
食欲を誘うスパイシーな香りと賑やかな笑い声。
学生さん、女子会、会社の仲間、外国人などなどいろいろな人たちがいた。
聞いたことのない音楽が流れていた。その独特な音楽とインド感満載の飾りつけとが相成って、店内は海外のような雰囲気を醸し出していた。