幸せのつかみ方

「そうそう。直幸、先週のレストラン、とってもおいしかったわ。ありがとう」
忘れる前に先週のお礼を言っておかなくては。そして、裕太と二人きりでのセッティングを止めてもらうように言わなくては。


「俺の方こそ、いつもありがとう。母の日と父の日のプレゼントを兼ねてたんだ」
「え?母の日?そうだったんだ。それはありがとうございました」
とお辞儀する。

先日のレストラン。
直幸の『離婚してほしくない』という思いが垣間見れた気がしたのだが、考えすぎたようだ。わざと二人きりにさせようとしていたなんて誤解して悪かったなあと反省する。

「で、食事はどうだった?」
にこにこと聞いてくる。

「ものすごく美味しかったわ。盛り付けもすごく素敵だったのよ」
「へー」
「海に夜景が反射してて、ものすごく綺麗でね、お洒落だったわー。」

「オマタセシマシター」
にこにこした外国人の店員さんによって、注文したサラダ、シークカバブ、タンドリーチキン、サモサが次々とテーブルに運ばれてきた。


「それでね、右を見ても左を見ても、周りはカップルだらけなの。
離婚した元夫婦できてるのは、絶対に私たちぐらいだったわね」

「傍から見たら母さんたちもカップルに見えるでしょ?」
「どうなのかしら?」

「若い頃とかさ、結婚する前とか。ああいうお店でデートしたりしたんじゃないの?」
「うーん。多分、ない」

「え?本当に?」
「うん」

「プロポーズは?」
「あー・・・・それは内緒」

「あるんじゃん!」
「どうでしょう」


裕太とお洒落なお店に言った記憶はほとんどない。
デートしてないとかではなく、私のご飯が好きだと言ったから、食事は家で食べることが多かったのだ。


裕太からのプロポーズも、裕太の家で私が作ったご飯を食べる時だった。




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