幸せのつかみ方
ジンバック
「何急に黙ってるの?父さんからのプロポーズ思い出したの?」
直幸の声に我に返る。
記憶の中に意識がとらわれてしまっていた。
「そんなに嬉しそうな顔するならやり直せばいいじゃん」
「やり直す?」
頭をひねると、直幸は真面目な顔をしてこちらを見てきた。
「父さんと復縁したらいいじゃん」
「しないわよ」
「父さん、母さんがいないと寂しそうだよ」
私は食べている手が止まった。
動揺を隠すよううに、あたかも指先を拭きたかったから手を止めたんです、とでもいうようにおしぼりで手を拭いた。
直幸はカバブを食べて、ビールをぐびぐびと飲んで、お代わりのビールを頼んだ。
一緒にジンバックのお代わりを頼んだ。
私はグラスに残っているジンバックをごくごくと飲んだ。
直幸が私が飲むジンバックを見つめている。
「父さんも、ジンバック好きだよね」
「あー。そうね。よく自分で作って飲んでた」
「この前、家に戻ったらスーパーで買った惣菜をつまみにジンバック飲んでた」
「そう」
ああ。ジンバックではなく、カシスソーダかモスコミュールにすればよかった・・・。
グラスに残ったジンバックを呷る。
「母さんさ、今、付き合ってる人とかいるの?」
「ええっ!?い、いないわよ」
「本当に?」
「うん」
「父さんにもいないみたいだよ」
「・・・そう」