幸せのつかみ方
「千夏さんはまだ食べれる?」

樹さんを見上げると、もういつも通りの優しい目。
耳も赤くない。

「もう1個食べたい」
と言うから、
「4分の1でいいなら」
と答えた。


樹さんはにやりと目をきらめかせて
「やっと手を繋げたところだし」
といたずらっ子の顔をのぞかせた。

「あはは。何言ってんですか」
びっくりする気持ちをごまかす様に笑って言う。

「えー。本気なんだけどなあ」
前を向きなおして、樹さんの顔を見るのをやめた。

さっきのいたずらっ子の顔を思い出す。
こんな表情もするんだと、意外な一面を見れて嬉しくなっている。

「私もまだ探検したい」
「探検って。千夏さんの散歩は冒険家みたいだね」

「わくわくするでしょ?」
「うん。ふふっ」

樹さんは笑いながら繋いだ手を引き寄せた。

「わっ!」

とん。
樹さんの腕に体がぶつかる。

樹さんは頭に顔を近づけ、
「楽しいっ」
と呟いた。
頭の真上から降ってくるその声は、とても嬉しそうで、私の胸がグンってなった。



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