幸せのつかみ方
「千夏さん、ちょっと寄り道しましょうか」
「え?」

にこにこ笑いながら樹さんは車を走らせている。


付いたところはパーキングエリア。
「まずはトイレ休憩」
樹さんはこちらを向いて、私に手を伸ばした。
頬にあたる掌。
ピクリと反射的に目を閉じる。

樹さんは頬を優しくなでた。
私はそっと目を開けると、樹さんは優しい目で私を見つめている。

「お化粧が落ちてるかもしれないですよ。
俺は気にしないけど、千夏さんは気にする?」
「あ・・・。気にする」
「うん」

頬から手が離れる。


カチッ。

シートベルトをはずされる。
樹さんが車から降り、助手席に回り込む。
ドアを開けてもらって、手を差し出される。

もう何度もあるこの光景。

いつもと違うのは、樹さんが手を離さないこと。

手を繋いだままパウダールームの前まで連れて行かれる。

「店の中でお土産見てるから、終わったら連絡して」
「うん」



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