幸せのつかみ方
お土産
「ねえ、樹さんこれ見て」
と言って隣の服を引っ張った。
「え?」
という声に振り返るとそこには知らない男の人がいた。
「す、すみません」
慌てて謝る私が顔を向けた反対側から、肩を引き寄せられる。
「すみません」
樹さんもその人に謝り、私の肩を抱いていた手を離した。
そして、「何を見るの?」とほほ笑んだ。
「えっと・・・これ」
肉まんの形をしたクッションを見せた。
「肉まんのクッション?」
触った彼は
「わっ触り心地がものすごくいい!」
「でしょ?でもね」
そういって、私はクッションを手に取り、さっとひっくり返した。
「これ、帽子らしいよ!」
「え!?」
肉まんをひっくり返すと、被る部分があるのがわかる。
「ほら」
そう言って実際にかぶってみせた。
くるりと体を反転させ、後頭部の肉まん模様を見せる。
「どうよ?」
「あははは」
樹さんはおもしろそうに笑った。
そして、ポンポンと頭、、、帽子を撫でた。
「気持ちいい」
「ふかふかですよねー」
「欲しい?」
「いや。欲しくはない・・・ううん!やっぱり欲しい!」
「え?欲しいの?」
「しかも樹さんに買って欲しい!」
「これ?」
「うん」
「初めてのプレゼントがこれ?」
「うん。被らないけど、家に飾りたい」
「いいよ」
そう言って樹さんは肉まんの帽子を買ってくれた。
樹さんに買ってもらった『肉まん帽子』。
これで肉まんの想い出は完全に今日になる。
「ありがとう!大事にするね!」
「被って出かけないでね」
「気を付ける」
「ふふふっ気を付けるんだ?」
店内から出て車に向かった。