幸せのつかみ方
スマホに写る庭の写真を眺める。
・・・・・。
私は何を浮かれているんだろう。
樹さんからの連絡を待つなんて、何を浮かれてるんだろう。
私は樹さんと違い過ぎる。
いろんな過去を持ちすぎてる。


スマホをテーブルに置く。
ビーズクッションに深く沈み込み、目を閉じる。



樹さんと私では何もかもが違い過ぎる。


あの夜、樹さんは私のことを「好き」と言ってくれた。
でも、樹さんの気持ちにこたえる勇気はない。




久しぶりにされた女の子扱いにときめいただけ。
優しさにドキドキしちゃっただけ。

『恋』じゃない。
『いいな』って思っただけ。

大丈夫。
この気持ちはまだ止まれる。





なぜだろう、目頭がジンとする。

「ふうー---」
深い深呼吸を一つする。

肉まん帽子をベッドの端に戻して、空になったマグカップを持ってキッチンへ行く為に立ち上がった。


ピロン♪~
スマホがLINEの通知を知らせる。

私は見ないでスマホの電源を落とした。


裕太と話したくない。
樹さんからの連絡を待ちたくない。


私はベッドに置いたばかりの肉まん帽子を見えないように押し入れに片付けた。





「よしっ!出かけよう!」
落ち込んだ気分を切り替えよう。

動きやすい服装と靴。
両手を自由に動かせる鞄を斜めにかけて、出かけよう!



玄関の鍵をかけて空を見上げる。

雲一つない真っ青な空。
「いいお天気だねっ」
とひとり言を呟いた。


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