幸せのつかみ方
景子と藤井さん
カッキーン!
気分転換はバッティングセンターに限ると思う。
うりゃ!
うりゃ!
と心の中で叫びながらバットを振りまくる。打ちまくる。飛ばしまくる。
打って打って打ちまくる。
20球×3回を打ち切って、ゼエゼエと肩で息をしながら、ネットの外に出る。
と、そこには腕を組んで立っている景子がいた。
ひらひらと手を振って合図する。
透明のドアを開け、外に出ると、景子の横には彼氏の藤井さんが手を振っている。
「あら、こんなとこで偶然ね。藤井さんもお久しぶりですー」
「久しぶりー」
藤井さんと挨拶を交わした。
藤井さんは私たちと同い年の離婚経験者。
景子とは仕事で知り合ったと言っていた。
会社を経営している藤井さんと結婚することによって、取引先に勤める景子が仕事をしにくくなるからという理由から、結婚ではなく同棲、パートナーという関係を保っている。
「『お久しぶりですー』じゃないわよ。さっきから飛ばしまくってる女がいると思ってみたら千夏なんだもん。
どうしたのよ?何かあった?」
「別に。ただの気分転換よ」
「おりゃー、おりゃーって叫びながら?」
「え?本当に?声出てた?」
「嘘だけど」
「嘘なんかーい」
とお約束で笑った。
「で。何があったの?」
「うーん。何にもないけど、いろいろあった」
「は?意味わかんないんだけど?」
「はははは。そうだと思う」
眉間に思いっきり皺を寄せる景子に笑ってしまった。
私自身、自分の心が複雑すぎてごちゃごちゃになっている。
景子に話すにはまだ時間が必要だと思った。
「久しぶりに打ちたくなっただけ」
当たり障りのない、且つ、嘘ではない返事をした。
「ふーん」
景子は聞きたいであろうことを敢えて聞かない。
「そのうち、聞いて」
と言うと、
「うん。もちろん」
と景子は口元をきゅっと上げた。
そして、
「あ、ねえ!」
景子が思いついたように顔を輝かせた。
気分転換はバッティングセンターに限ると思う。
うりゃ!
うりゃ!
と心の中で叫びながらバットを振りまくる。打ちまくる。飛ばしまくる。
打って打って打ちまくる。
20球×3回を打ち切って、ゼエゼエと肩で息をしながら、ネットの外に出る。
と、そこには腕を組んで立っている景子がいた。
ひらひらと手を振って合図する。
透明のドアを開け、外に出ると、景子の横には彼氏の藤井さんが手を振っている。
「あら、こんなとこで偶然ね。藤井さんもお久しぶりですー」
「久しぶりー」
藤井さんと挨拶を交わした。
藤井さんは私たちと同い年の離婚経験者。
景子とは仕事で知り合ったと言っていた。
会社を経営している藤井さんと結婚することによって、取引先に勤める景子が仕事をしにくくなるからという理由から、結婚ではなく同棲、パートナーという関係を保っている。
「『お久しぶりですー』じゃないわよ。さっきから飛ばしまくってる女がいると思ってみたら千夏なんだもん。
どうしたのよ?何かあった?」
「別に。ただの気分転換よ」
「おりゃー、おりゃーって叫びながら?」
「え?本当に?声出てた?」
「嘘だけど」
「嘘なんかーい」
とお約束で笑った。
「で。何があったの?」
「うーん。何にもないけど、いろいろあった」
「は?意味わかんないんだけど?」
「はははは。そうだと思う」
眉間に思いっきり皺を寄せる景子に笑ってしまった。
私自身、自分の心が複雑すぎてごちゃごちゃになっている。
景子に話すにはまだ時間が必要だと思った。
「久しぶりに打ちたくなっただけ」
当たり障りのない、且つ、嘘ではない返事をした。
「ふーん」
景子は聞きたいであろうことを敢えて聞かない。
「そのうち、聞いて」
と言うと、
「うん。もちろん」
と景子は口元をきゅっと上げた。
そして、
「あ、ねえ!」
景子が思いついたように顔を輝かせた。